【「家事えもん」こと松橋周大呂×佐藤尚之対談】「ジリメンの掃除洗濯」は極限までシンプルに!

ジリメンとは、生活面で自立した男性のことで、佐藤さんの造語です。
これまで継続のための健康的な料理の知識をその道の第一人者にうかがってきましたが、今回は「ジリメンのための掃除洗濯」について、「家事えもん」こと松橋周太呂さんに教わりました。お話の内容は、まさに知っているのといないのとでは明日からの暮らしが変わるものでした。「これなら継続できるかも!」と思う「家事に苦手意識ある方々」も多いのではないでしょうか。

●前回の【vol.9 先生、一汁一菜で栄養は足りてますか?】はこちらから
●今回初めてこの連載を読んでくださっている皆さん! ぜひ、vol.1の「宣言編」をご一読ください。
【vol.1  もしかしてオレ、自立してなかった⁉】

佐藤尚之(さとう なおゆき)さん
コミュニケーション・ディレクター。
1961年東京生まれ。著書に「ファンベース」(ちくま新書)、「明日の広告」(アスキー新書)など。また“さとなお”の名前で「うまひゃひゃさぬきうどん」(光文社文庫)、「沖縄やぎ地獄」(角川文庫)、「沖縄上手な旅ごはん」(文藝春秋)、「極楽おいしい二泊三日」(文藝春秋)などがある。
2018年にアニサキスアレルギーになって外食や旅に行けなくなり生活がガラリと変わる。一汁一菜を毎日作ってインスタグラムにアップもしている。
facebook:http://www.facebook.com/satonao
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一汁一菜instagram:https://www.instagram.com/enjoy_ichiju_issai
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松橋周太呂(まつはし しゅうたろ)さん
生年月日:1985年1月19日
血液型 :B型
デビュー:2004年(NSC東京9期)
掃除、洗濯、料理好き芸人「掃除検定5級」「ジュニア洗濯ソムリエ」「調味料検定」の資格を取得。著書に『ほったらかし掃除術』『すごい家事』『片付け収納掃除洗濯教書』がある。

『ほったらかし掃除術』(松橋周太呂 SB Creative)対談記事中でご紹介する各種スライドを含め、掃除も気持ちも楽にする情報が満載の一冊。

撮影/原 幹和 原稿/小林みどり

さて、今回は「継続できる掃除洗濯」だ

ジリメンにとって一番ハードルが高い「料理」について、ここまで「継続・習慣化」を切り口に深山まで分け入ってきたわけだが、そろそろ次の山に向かおうと思う。

掃除洗濯という、これまた高い山である。

料理はともかく掃除は得意、という人ももちろんいるだろう。
でも、妻が一週間ほど留守にするだけで部屋は散らかり放題かつ洗濯物は溜まり放題という男性も多いのではないだろうか。また、おひとり様で、すでにリビングが汚部屋と化している方もいるだろう。

今回はそういう方のための回である。

かく言うボクも、まぁ汚部屋にはなっていないものの、掃除には苦手意識がある。
いや、ホコリ関係は「ロボット掃除機」が全部やってくれるのではあるが、でも、トイレやお風呂、キッチンの汚れなどは「どこからどう手を付ければいいか」がよくわからない。
検索したりAIに訊いても、様々な方法が提示されてこんがらがる。もっと「何にでも応用できるシンプルな原則」みたいなものはないのだろうか。

そしたら、あったのだ。
何にでも応用できる、掃除洗濯のシンプルな原則、が。

教えてくださるのは「家事えもん」こと松橋周太呂さんである。家事好き芸人として吉本興業に所属している。
ご自身もとても面倒臭がりだそうで、元からのキレイ好きというわけではない。だからこそ「原則」を見つけて家事を極限までさぼる方法を見つけ出されたのであった。

いやぁ、今回のを読むと、なんかすごい気が楽になりますよ!

ジリメンのための「極限までシンプル化した『汚れ落とし』」とは

最初に今回の内容を簡単にまとめてみよう。
まずはキッチン、トイレ、風呂などの汚れ落とし
例外はもちろんあるが、原則は大きく3つだけである。

【汚れ落としの原則①】
まずは「新築状態」に戻す!
これが最大のコツだ。まず新築状態にする。そのために「人生最後のリセット掃除」をやる。そうすると今後の人生での掃除の手間が激減する。
え? それが大変なんじゃないのって?
うん、でも、原則②と③を読むとわかるが超ラクチンだ。基本「放っておく」のである。

【汚れ落としの原則②】
気になる汚れは、主に「生物系」と「無生物系」の2つ! 洗剤もまずは2つだけ!
キッチンだろうがトイレだろうが風呂だろうが、その2種類で分けてOKだ。洗剤もキッチン用とかトイレ用とかお風呂用とか分けなくていい。

★生物系(カビ、ヌメリ、除菌):泡タイプの塩素系漂白剤ひとつ
★無生物系(コゲ、水アカ、油汚れ、鏡のウロコ)」:クレンザーひとつ
なんとこれだけである。
新築状態にする洗剤は2つだけ。それでなんでも応用が利く。

【汚れ落としの原則③】
汚れ掃除は「乾いたとき」に。基本「放っておく」!
すごいぞ〜。自分の家でやってみたけど、放っておくだけで確かに新築状態に戻る。ただし乾いたときに何度かかけて長めに放っておくこと。

【汚れ落としの原則④】
普段の汚れは「キッチン用洗剤のみ」で月イチでOK!
うれしいのは、洗剤の数が激減することだ。泡タイプの塩素系漂白剤とクレンザーで新築状態に戻して、普段はキッチン用洗剤だけ。まずは最小限で十分

ジリメンのための「極限までシンプル化した『ホコリ掃除』」とは

日本人は掃除のとき、窓を開け放つよね。やめよう。それだけで大きく違う。

【ホコリ掃除の原則①】
ホコリ掃除は「誰もいないときに窓を閉めて」手前から!
驚いたのだけど、一度舞いあがったホコリって床に落ちるのに何時間もかかるらしい。だから窓とか開けてホコリを舞いあがらせて掃除するとホコリを取り切れず、効果半減ということだ。なるほどー。
同じ理由で、人が動いているとホコリが舞うから効果半減。誰もいないときに部屋の入口から始めるのがベスト。

【ホコリ掃除の原則②】
ロボット掃除機も「誰もいないときに窓を閉めて」!
原則①と同じことはロボット掃除機にも言える。「さてロボット掃除機に動いてもらうから整理しなくちゃ」とかやってるとせっかくのホコリが舞いあがる。簡単に整理したらそのまま出かけるなり寝ちゃうなりして、誰もいないときにタイマーかリモートで動かそう。

ジリメンのための「極限までシンプル化した『洗濯』」とは

【洗濯の原則①】
前提として「アイロンがいらない服を着る」。ジリメンはそれでよし!
洗濯の面倒の半分は「アイロン」と「たたみ」だ。そこをまず簡略化しよう。アイロン無用のシャツを着る。それだけで洗濯関係の苦痛が大幅に減る。え?オシャレじゃない? 大丈夫、次回、ファッションコーディネーターに「アイロンがいらない服でのオシャレ」をお訊きする。

【洗濯の原則②】
外で干さない(特に夏)。部屋干しはサーキュレーター必須!
亜熱帯と化した日本での外干しは衣類を傷めるし、いつゲリラ豪雨に襲われるかもわからない。だから部屋干ししよう。そのときのコツはたったひとつ。サーキュレーターを回すことだ。サーキュレーターの電気代は激安、毎日4時間回しても月に100円程度!

【洗濯の原則③】
生乾き臭や汗臭は60℃のお湯に粉末の酸素系漂白剤を溶かしてつけ置き30分!
ジリメンにはとても大切! とかく男は臭くなりがち。生乾き臭したTシャツを着てる男も多いよね。その匂い、洗い直しでは取れないので、レッツつけ置きだ! 60℃のお湯に30分。それだけ。

ということで、以下、松橋さんとの対談だ。
くわしいことをいろいろお聴きできるうえに、掃除洗濯のハードルがダダ下がる。
ぜひお読みください。

「営み」というワードがものすごく刺さったんですよ!(松橋さん)

松橋さん(以下、松橋):僕には7歳と4歳の子どもがいるんですけど、子供が生まれてからの7年間、今まで以上に家事と向き合ってきました。

佐藤尚之さん(以下、さとなお):それは大変でしたね。学校で家庭科が得意だったとかあったんですか?

松橋:得意ということはなかったのですが、母子家庭だったので、小学生の頃からお米研いだり、泥汚れを自分で落としたり、洗濯や炊事など家事は普通にしてました。

ジリメンの連載を読んで、「営み」というワードがものすごく刺さったんですよ! 「家事を手伝う」とか「男も家事に参加しよう」じゃなくて、「営み」。「営み」って生活に寄り添った、体からにじみ出る言葉だから。さとなおさんが危機感を持っているところにすごく共感しました。僕もずっと思っていたことだ!って。

さとなお:この前、家事を研究している学者さんにも会って話を聞きましたが、やっぱり「男が参加する」というスタンスで研究されているんですよね。いや、参加とかシェアとか言う前に、まず人間として自立しよう、まずは営みにしよう。一人前にひととおり家事ができるようになって初めて、家族やパートナーと「分担」できるわけで。

松橋:自立ですよね。自治体が主催する男女共同参画のイベントによく呼ばれるんですけど、お客さんの9割は女性ですね。奥さんと一緒に参加してくれている前向きな男性も1割くらいはいるんですが。本来はそこに来ていない旦那さんに届けられるような、自立を促すようなイベントにできたら理想ですよね。

さとなお:家事をやっていると言う男性も、おそらくゴミ出しくらいはやっていても、意識は「やってあげている」的だったりする。主体が自分にない場合がわりと多いんですよね。それでは「妻への依存」の範疇を出ていない。年末の大掃除とかも、どこかで「やってあげている」感を出してくる。

松橋:誰でも陥りがちですが、俯瞰で聞くと腹立ちますね(笑)

さとなお:ですよね(笑) 自立できる家事は、僕は最低限でいいと思ってるんです。最低限でも、営みとして「続く」というところが大事で。

“人生最後のリセット掃除”がその後の”営み掃除“を継続させるんです(松橋さん)

松橋:掃除で言えば、洗剤や道具を必要最低限にしぼることも、営みを続けやすくなるポイントですよね。僕に言わせれば、“人生最後のリセット掃除”用には洗剤ふたつ、その後の“営み掃除用”は食器用洗剤でいろいろまかなえちゃいますよ。

さとなお:人生最後の⁉ 

松橋:僕の掃除は二段階構成になっていて、まず第一段階が“人生最後のリセット掃除”。ここで、お風呂の黒カビだの便器の黒い輪ジミだのコンロにこびりついた焼け焦げといった、いわゆるガンコな汚れを一掃しちゃうんです。一度落としてしまえば、もう新築と一緒。あとはキープするだけだから、めちゃくちゃサボれる。実際のところ、僕はもう15年もカビの大掃除してないです。

さとなお:え〜! 

松橋:で、第二段階が日常の軽い掃除、これが“営み掃除”ですね。これはもはやお掃除と言うよりお手入れ程度の域です、もうリセットしてあるので、毎日する必要はありません。月に2回くらいでいいんです。この営みを細々と続けていけば、毎年の大掃除なんて必要ない。だから、リセット掃除は人生最後なんです。

さとなお:なるほど〜、すごいなぁ。一回リセットして、あとは月1、2回でいいとか、本当に気が楽になります。掃除を”日常の営み“にする前に、これまでにたまった汚れを一回、一掃しておくわけですね。

松橋:そうです。この先ずっとラクするために1度だけリセットします、で家中のリセット掃除さえ、使う洗剤はまずは2種類でOKというわけです。

さとなお:うち、シンク下に洗剤いっぱいあるなぁ…。でも、トイレもコンロも排水口も同じ洗剤でいいんですか?

松橋:そうですね。場所というより、汚れの種類で使い分けます。まずひとつめは、塩素系漂白剤の泡タイプ。”プールの臭いがする“シュッ!と泡になって出てくるやつです。百円ショップのものでもPBでも何でもかまいません。

水回りでよく見る黒カビ、ぬめり、ピンク色のぬめり。あれみんな、菌が原因の「生物系の汚れ」なんですよ。そういう生物系の汚れには、“プールの臭い”がする塩素系漂白剤が効くんです。

いろいろ場所別に買うと面倒でやる気も出ないと思うので、まずは一番広範囲に使えるキッチン用だけで良いです。キッチン用もお風呂用もトイレ用も主成分は近いものが多く、排水口からまな板まで漂白できるキッチン用なら、トイレの便器の淵裏や黒ずみ、お風呂の排水溝やカビやヌメリにも有効なので、まずは1本で十分だと思います。

さらに僕の場合、面倒くさがりなんで、こするの嫌なんですよ。だからしっかり密着する泡タイプがベストですね。シュシュッと吹きかけて、あとは放置。30分置いて見に行って、黒カビがまだ取れていなければ、またシュシュッとやって30分。これを数回繰り返したら、芸人仲間の6年物の黒カビでもちゃんと落ちました!

さとなお:おぉ、すごい! 泡タイプなら「かけて放置」でいいんですね。お風呂もトイレも、この1本でOK?

松橋:はい。便器の黒い輪ジミもいけますよ。便器のフチ裏とかもね。ただ、高級な便器はコーティングがされていて悪影響を及ぼす場合があるので、まずはトイレの注意書きをチェックしてもらってから行ってください。

さとなお:“生物系の汚れ”かぁ。なるほどー。そういう蘊蓄、男は語りたいんですよね(笑)

松橋:ですよね。あとふたつ!洗剤をパワーアップさせるポイントを語ってもいいですか(笑) 塩素系漂白剤を使うときは、表面が乾いてからやること。泡で出ている段階ですでに濃度が高くないのに、水分があるとさらに薄まって効果が半減しちゃいますから。

あとですね、塩素系漂白剤ってコロナウイルスやO157なんかも除菌できるんですけど、製造された日からどんどん劣化して、3年で効果がすごく落ちる(※1)みたいなんですよ。なので、買い置きには不向き。1本をキッチンだけじゃなくて家中のあちこちに使えば、買い替えサイクルが早くなって、濃度が高いうちに使えて効率がいいですよね。

さとなお:へぇ、知らなかった! いい蘊蓄(笑)

松橋:ありがとうございます(笑) それと、ゴムパッキンなどどうしても落ちない黒カビは、泡タイプじゃなくて液体タイプの塩素系漂白剤を刷毛で塗るといいですよ。濃度が最強ですから。刷毛は絵具用でもなんでもかまわないんで。プロの掃除屋さんで刷毛持っていない人はいません。

さとなお:塗った上をキッチンペーパーだかラップだかで覆うとか、聞いたことがあります。

松橋:確かに効果は上がるので正しいやり方なのですが、今回はよりハードルを下げたいので面倒くさいことしなくていいですよ。色々試したんですがラップやパックなしでも実験の結果、十分な効果を確認できましたので!30分放置してダメなら、また塗って放置。これを繰り返すといずれキレイになります。1日で一気に何度もやるのが面倒なら、数日後とかおいて続きをやっても大丈夫ですよ。

※1:塩素系漂白剤の主成分である次亜塩素酸ナトリウムは、常温で保管されていてもゆっくりと分解し、濃度が低下していきます。購入後3年以上経過した古い製品は、効果が著しく低下している場合がありますので、使用はおすすめできません。

水アカや焦げなど“非生物系汚れはクレンザーとゴム手袋”と覚えてください(松橋さん)

さとなお:シンプルですねー。

松橋:そうそう、シンプル。で、もうひとつの洗剤は、クレンザーとゴム手袋。

さとなお:クレンザーって、クリームみたいにトロっと出るもの?

松橋:そうですね、そういったクリームクレンザーは日常のライトな汚れ用なんです。目立つ汚れを落としたい時は百円ショップの「多目的クレンザー」という粘土みたいなタイプをお勧めします

さとなお:ほー、そうなんですね。ちなみにクレンザーは何に使うんですか? 焦げ落とし?

松橋:そうです。コンロの五徳や魚焼きグリルなんかにごびりついた焼け焦げ、あとは蛇口やシンクのくもりや白い水アカ、鏡のウロコですね。白い水アカは水道水のカルシウムの結晶だし、コンロの焼け焦げは油や食材の酸化だったりで、菌とは関係ない“非生物系”の汚れじゃないですか。こういう非生物系はクレンザーとゴム手袋、と覚えるといいですよ。

さとなお:“非生物系”ね。わかりやすい分け方だなぁ。

松橋:ありがとうございます(笑) ゴム手袋をはめた手にクレンザーをとって、そのままゴシゴシこすっちゃいます。スポンジは片手でしか使えないですし、せっかくのクレンザーを吸っちゃってもったいないですからね。ゴム手袋だと両手で広範囲を一気に磨けるので倍速でラクに終わります。

さとなお:手袋のまま? それは簡単でいいですね。蛇口の細かい部分もやりやすいし。

松橋:ですよね。シンクなんかピカピカになって、気持ちいいですよ。百円ショップ大好きな僕ですけど、ゴム手袋だけはちょっといいものを買うほうが逆にお得だったりします。ゴム手袋の不満点は、蒸れて着け心地が悪い、薄すぎるものを買うと破れて買い直しになる、この2点なので、特に高級なものを買う必要はなく、200円くらいでも裏起毛で着け心地が良く蒸れづらく、今までのゴム手袋の装着感を覆すような感動があったり、厚みも100円ものより圧倒的に頑丈なので買い直しも減るので長い目で見るとちょっといいものにするほうが使用感とお財布両方快適です。ちなみにおすすめはエステーの「ファミリー プレミアムタッチ ヒアルロン酸」です。

ファミリー プレミアムタッチ ヒアルロン酸 (エステー) サイズはS・M・Lの3種類

生物系汚れの”営み掃除“は月1回、塩素系漂白剤をシュッ!だけです(松橋さん)

さとなお:すごいな、洗剤2本でお風呂、トイレ、キッチン、みんな掃除できちゃった。これが「人生最後のリセット掃除」だということですね。

松橋:そうです。これでいったん新築状態にリセットできたので、ここからはもうサボりまくりです。第二段階、必要最低限の「営み」ですね。この営みが続けられれば、先ほどお話ししたリセット掃除は文字通り人生最後で、もう来年の大掃除は必要ありません。

さとなお:せっかくこれだけ蘊蓄覚えたのに、もう二度とカビ取りできないなんて!(笑) でも、この「続ける」というのが難しいんですよね。トイレのたびにシュッとできるように1本置いておくとかそういうことですか?

松橋:そんな手間は必要ないし、クエン酸がどうとか新しいことは何ひとつ覚えなくていいです。徹底的に手間を省いて、使う洗剤も回数も減らして、必要最低限を日常に組み込んでいくわけです。

たとえばトイレなら、リセット掃除に使った塩素系漂白剤の泡タイプ、あれを2週間、3週間に1回、便器のフチ裏にシュシュッとやっておく。ただそれだけ。

さとなお:でも、その2週間に1回というのがハードルになったりしませんかね……。

松橋:それなら毎月1日(ついたち)と決めるとか。まあ、これはその人のタイプにもよると思うので、各自自由に決めればいいですよ。慣れてくると、案外ほんのささいな汚れも気になるようになるかもしれませんし。

さとなお:お風呂やキッチンは?

松橋:お風呂もキッチンも、最初にピンク色のぬめりが出現する場所を重点的に、トイレと同じように塩素系漂白剤の泡タイプを月1回シュッとやるだけですね。ピンク色のぬめりは、いわゆる酵母。そういう場所はカビも好きなんで、そこを叩いておけばカビは増えません。
プールの臭いが嫌いという人は、熱いお湯でもいいですよ。60度とか一番高い温度に設定したシャワーを、至近距離から5~10秒くらい直射するんです。遠くに離しちゃダメですよ、湯温が下がっちゃうんで。

さとなお:高温シャワーですね。

松橋:キッチンの排水口なんかも同じですね。塩素系を使うか、高温のシャワーで。

バスタブ掃除には食器用洗剤を薄めて洗うこともできます(松橋さん)

さとなお:お風呂のバスタブの掃除は? あれはやっぱり、お風呂用の洗剤で毎回?

松橋:もし洗剤を新たに揃えるのがおっくうでしたら、食器洗いの中性洗剤でいいですよ。

さとなお:食器洗い用で⁉

松橋:そうですね。あれでちゃんと皮脂汚れは落ちるから代用できちゃうんですよ。だって、ホイコーローの油はお風呂用洗剤では落とせそうにないけど、食器用洗剤なら落とせるでしょ?

さとなお:確かに〜!

松橋:さとなおさん、バスタブの掃除はこする派ですか? 洗剤かけて放置派ですか?

さとなお:洗剤には放置でいいって書いてあるけど、やっぱりこすっちゃうかなぁ。

松橋:泡をかけて濯ぐだけのタイプの洗剤を使っている方は別ですが、こする派なら、お風呂用洗剤は食器用洗剤で代用もできます。汚れに密着させるために泡立つようにできてるんですけど、逆に排水口に泡が残って何度もシャワーあてたりしてません? あれ、時間の無駄ですよね。どうせこするなら、密着させる必要ないじゃないですか。食器用洗剤を20倍30倍に薄めて使えば、あんまり泡立たないんですすぎがラクですよ。

さとなお:なるほどなぁ。食器用洗剤1本でいいのか。

松橋:食器用洗剤は中性なんで、いろいろ使えますよ。フローリングを拭くときも、薄めたのを使えますからね。

さとなお:食器用洗剤、優秀ですねえ。

松橋:ほかにもおもしろいものありますよ。アルカリ電解水なんて、ノロウイルスやO157やコロナなんかも除菌できるほど優秀なものもあります。なのに、ただ電気分解しただけの100%水なんで、口に入れても大丈夫なんですよ。

さとなお:それはすごいですね。何に使うんですか?

松橋:洗剤を使いたくないような場所ですね。調理中のキッチン、テーブルや壁のスイッチ、ガラスの手垢、照明とか。ちょっとした汚れをサッと拭き取るイメージ。

それから、メラミンスポンジ。白くて四角い硬いスポンジみたいなのあるじゃないですか。コンロ周りの油汚れは、あれをお湯につけてサッと拭き取るだけで落ちますね。ただし、これもコンロの注意書きに「メラミンスポンジは使わないでください」と書いてある場合もあるので、まずそこを読んでください。今は名刺サイズのシートタイプもあるんで、何枚か置いておいて、汚れが目立ってきたらササッと。

さとなお:なるほど。第一段階のリセット掃除用に、塩素系漂白剤の泡タイプと、クレンザーとゴム手袋。そのあとの営み用に、食器用洗剤。まずはこの3本でやってみて、慣れてきたら、アルカリ電解水やメラミンスポンジに手を広げてもいいかもしれないですね。

そういえば、ホコリはどうすればいいんですか? 棚とか床とか。

ホコリ・掃除機は“ホコリを舞い上がらせない”のがポイント(松橋さん)
ジリメンには、家事代行もいいと思うんです(佐藤さん)

松橋:ああ、ホコリ。まずは棚とかの上の方にあるホコリなんですけど、いろいろ試しましたが結論として、モフモフしたヘッドの角度が変えられて柄の長さが調節できるものが最強ですね。

さとなお:あぁ、これですね。モフモフの。いつも使ってます。

松橋:そう、モフモフの。ホコリのキャッチ力が抜群なんです。グリップは伸び縮みするロングタイプが便利ですよ。カチカチッと角度を変えられるので、エアコンの上やソファの下なんかもやりやすいんです。

さとなお:最強ですね。ボクも実感してます。

松橋:床のホコリは掃除機で。床のホコリは人が動くと舞い上がって、10時間くらい落ちてこないんですよ。そこに掃除機をかけても無駄なんで、ホコリが床に落ちているタイミングに掃除したいですよね。

そのポイントは3つ。まず、窓を開けないこと。開けるとホコリが舞い上がっちゃいますからね。次に、人が起きてくる前の朝にやるか、みんなが帰宅する直前の夕方にやること。3つめは、部屋の手前から奥に向かって、ゆっくり掃除機をかけること。昔は部屋の奥から手前へなんて言いましたが、あれは箒の話しですから。

さとなお:なるほど!

松橋:ちょっと面倒に感じるかもしれませんが、これなら確実に今あるホコリを吸い取れるので、掃除機をかける回数が半分ですみます。

さとなお:一番いいのは、誰もいない時間帯にロボット掃除機かもですね。

松橋:家を出発したばかりの埃が浮いているときよりも、帰宅の一時間前にタイマーかけると埃のを効率よく吸えるので、稼働する回数を減らせますね。

さとなお:あと、ボクはジリメンにとって「家事代行」も良いのではないかと思っているんです。月に一回頼んでも数千円です。この「月に一回、他人が掃除に来る」というのが適度のプレッシャーになって、普段からわりとキレイにするようになるのではないか、と思っているんですよね。特に掃除馴れしてない最初の半年くらいは家事代行を頼んで、掃除グセをつけていく、とか。

松橋:いいと思います! お掃除系の家事代行には2種類あるって知ってました? ひとつは、いわゆる家事代行で、その家にあるものだけを使って掃除するタイプ。これはただのお手伝い、作業の人員っていうスタンス。”営み掃除“のプロ。

もうひとつは、ダスキンみたいな掃除のプロ。自分たちオリジナルの道具や洗剤を持参するタイプですね。ちょっと値は張りますが、第一段階の人生最後のリセット掃除には、こちらのタイプを頼むのもいいでしょうね。

さとなお:なるほどね、そんな違いがあったのか。ええと、だいたいお訊きしたけど、あとは洗濯かな。

衣類の部屋干しにはサーキュレーターを使ってください(松橋さん)

松橋:洗ったり干したりの前に、まずシワになりにくい素材の服を買いましょうと言いたい

さとなお:ああ、ありますね。僕も持ってます。

松橋:そう。アイロン掛けが必要な綿のシャツとか買ってきて、洗い方に気を遣ったり干すときにパンパンとやったりって本当に面倒。最初からそんな手間がかからない素材の服を買っておけばいいんですよ。
もうひとつね、気になるのが生乾き臭。電車なんかでちょっと臭いが気になる人っているじゃないですか。あれ、ほとんど衣類の生乾きの臭いなんですよ。

さとなお:え、加齢臭じゃなくて? 干し方の問題?

松橋:強い紫外線で衣類が劣化しちゃうんで、特に夏は部屋干しが多くなると思うんですけど、乾くのに5時間以上かかると菌が繁殖して生乾きの臭いがしちゃう。

さとなお:5時間以内に乾かせと。夏はいいけど、他の季節は難しいんじゃないかな?

松橋:そう、だからサーキュレーター。首振りとタイマー機能がついてるといいですよね。

さとなお:サーキュレーターか。使ってないなぁ。

松橋:使った方がいいですよ。一度生乾きの臭いがついちゃったら、60度くらいのお湯を洗面台にためて、粉末の酸素系漂白剤―百円ショップのでも何でもいいんですけど、それを溶かして30分漬け置き。

さとなお:え⁉ もう一度洗えばいいんじゃないんですか?

松橋:洗っただけじゃ取れないですね。菌なんで。濡れたらまた臭ってきます。

さとなお:知らなかった! これはジリメンに必要な情報(笑) 臭うのが気になる年ごろですから。

松橋:まあ加齢臭でも、酸素系漂白剤に30分漬け置きで臭いは抜けますから。臭いとかシミとか、何か抜きたいと思ったときには粉末の酸素系漂白剤ですね。

さとなお:いやあ、勉強になりました。惜しみなく知識をシェアしてくださって、ありがとうございます。知っているのと知らないのとでは、家事の効率や回数が全然変わってきますから。

松橋:家事を必要最低限におさえて、浮いた時間で好きなことをやってほしいというのが、僕の願いなんです。これで男性の生活自立に役立てるなら、すごくうれしいです。

次回に続く【近日公開予定】


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