【府中市 × ウェルビーイング100 食育プロジェクト:report1「試作会」】

1日1杯の「野菜たっぷり腸活味噌汁」で、健康寿命を延ばす。
市民による、市民のための取り組みが、東京都府中市で始まっています。
医学的な裏付けもありながらその行動はシンプル。
府中市福祉保健部健康推進課とともに、このプロジェクトを推進するのは私たち
オレンジページ「ウェルビーイング100」です。
この連載は、ここから来年の3月までの間、取り組みの進捗状況などをご紹介するものです。
自治体が「住民の健康のために身体に良いことの習慣化を目指す」、その一つの事例として、ご参考になればと思っています。

文・撮影/ウェルビーイング100編集部

まずはご報告、10/15府中市民のみなさんのレシピの試作を行いました

調理室のドアを開けると、そこは府中市の健康推進課の栄養士3名の皆さんが手際よく準備する音で活気にあふれています。
「お肉は私が切るね」
「レシピ●番素材揃いました!」
見事な連係プレーでどんどん準備が整えられます。

やがて次々に湯気の立つ味噌汁が出来上がります。
小松菜、大根、さつまいも——「JAマインズ多磨支店」で購入した府中産野菜もたくさん。
各自、小皿に取り分け、できた順に試食。市民の皆さんが考えた味噌汁レシピは、ふだんの味噌汁から洋風、中華風、韓国風のものもあり、どれも風味豊かで簡単で、おいしい。
ご飯だけでなくパンに合うものもあり、「これ、おうどん入れてもいいね」というものも。

10月15日に府中市立中央文化センターで行われた、府中市と(株)オレンジページ「ウェルビーイング100」で進めているプロジェクトの試作会です。
市民のみなさんから寄せられたレシピを、実際に作って、味わう。
試作担当以外の健康推進課の皆さんにも試食していただき、キッチンには、笑い声が響き、味噌のいい香りが漂っていました。

そもそも、これは何の話か、ご説明します

府中市には「市民協働・共創促進事業」という仕組みがあります。企業・市民団体等と市が手を組んで、まちの課題に取り組むためのもの。オレンジページのサイト「ウェルビーイング100」は、この事業に「ウェルビーイングの視点」から提案を行い、審議会を経て採択していただきました。

取り組みの名称は「健康寿命を延ばす府中の食育プロジェクト」。
副題は「知って、食べて、整える。〜腸活習慣で始める、毎日の食行動変容〜」。
全体の監修は、腸と自律神経の研究で有名な、順天堂大学医学部 特任教授の小林弘幸先生です。

府中市健康推進課のパーパスは何か

まず、私たちにとって大切な一歩は、府中市健康推進課の皆さんとミーティングし、どんな課題があり、どのように解決できるかを話し合うことでした。

府中市は「第3次府中市保健計画・食育推進計画(令和3〜8年度)」で、生活習慣病の予防と健康寿命の延伸を、まちづくりの中核に置いています。

数字を、少しだけご紹介させてください。
府中市民の主な死因は、悪性新生物29.9%、心疾患16.9%、脳血管疾患7.5%。これらの病気は生活習慣にかかわると言われ、亡くなる原因の半分を超えています。
中年の男性のメタボ該当・予備群は47%。
野菜1日あたりの推奨摂取量350gの目標を達成できている年代層は、もっとも高い高齢の女性でですが、それでも37.3%です。

「健康にいい」とわかっていても、暮らしの中ではそれが習慣化できない。
市が市民に投げかける言葉も、声も、若い世代や働く世代に、うまく届いていない。
健康推進課の悩みはここにありました。

これは、もちろん、府中市だけでなく、多くの自治体共通の悩みでもあると思います。

では、何をしたらよいか?
市民が起点となってそれがじわじわと広まって、長く継続できるようにするにはどうしたらよいか?

ミーティングから生まれたこの事業の目的は、
「正しい知識を配る」ことではなく、
「市民が自分の毎日の食卓で、よいことを続けられる形にすること」なのです。

レシピを考える市民たちメンバーは
まず先に、なぜそれをするかの医学的な知識を「知る」、
知った人たちがレシピを考える。
一般市民は
なぜ、味噌汁が健康に良いか、習慣化することが大切かを来年2月の小林先生の講演で「知る」、
知ると、味噌汁を「食べる」理由が明確になる、
毎日続ければ何となく不調が遠のき、体調が「整う」。

結果はすぐには出ないかもしれません。
でも、そこまでの道のりをイメージし、そこを楽しく、わくわくしながら進めることも大事です。

まずは市民に対して、「腸活味噌汁レシピ」を考案するメンバーの募集を開始。
多くの応募者の中から抽選で選ばれた市民と、市の食育推進リーダーさんたちを含む27名がプロジェクトに参加することに。
中には府中市にある都立農業高校の生徒さんもいらっしゃいます。

広報「ふちゅう」2026年7月1日号に掲載された「食育講座・腸活セミナー」の告知。

8月6日、まず「腸活セミナー」でプロジェクトの基盤を「知る」

この日を起点に、府中市の「腸活味噌汁」のレシピ募集がスタート。
だからこのセミナーは、このプロジェクトの副題のいちばん最初の「知る」日でした。

このプロジェクトの基盤になるのは順天堂大学医学部 小林弘幸先生の
「腸活×自律神経調整で血流をよくする」理論。
味噌汁レシピを作っていただく前に、まずはこの理論を市民の皆さんに知っていただくため、8月6日、府中市健康推進課のみなさんが主催する健康セミナーの一枠を、「ウェルビーイング100」編集部が担当させていただきました。

前半のテーマは、「健康の軸を、ひとつだけ持つこと」。
このプロジェクトの理論の基盤となる小林弘幸先生の健康の定義は、シンプルです。
「健康とは、体にある約37兆個の細胞すべてに、質の高い血液がしっかりと行きわたっている状態のこと」。
そして、その血液の質を決めているのが、腸。
だから、迷ったら「これは腸にいいかどうか」で選べばいい。
健康情報の多さに疲れている現代の私たちには非常に救いになる考え方です。

後半は、その腸を、毎日の食卓でどう整えるか。
柱は、たった3つ……発酵食品、食物繊維、そして温かさ。
まさに、この3つが一椀にまとめられる食べ物があります。
それが味噌汁。

味噌は発酵食品、野菜・きのこ・海藻は食物繊維、そして温かい。
だから最後の締めくくりは
「明日から、温かい味噌汁を1日1杯」。

たったそれだけのことですが、
習慣化することで腸の調子がよくなり、血流はアップし、自律神経のバランスが整い、健康になるのです。

「共創」のあたたかさ

今回大切なのは、行政が作ったレシピを配布するのではなく、
「市民が考えたレシピを市民が食べる、習慣化する」、ということ。

皆さんから寄せられたレシピにはどれも工夫や思いが込められている。
でも、数を絞る必要があります。
全体バランスを見ながら健康推進課の皆さんとレシピを選ぶのは楽しく、発見や気づきの多い良い時間でした。
試作会を経て、家でも再現してみて、これを考えてくださったときの市民の皆さんや、それをまとめる健康推進課の皆さんの様子をイメージすると、なんだかとても温かい気持ちになります。

この後、11月末に全味噌汁の撮影をし、小林先生の理論とともにレシピは小冊子にまとめられます。
撮影用の味噌汁を調理するのは料理家の角田真秀さん、撮影はプロカメラマンの原幹和さんです。
実際に府中市民がこのレシピで日々お味噌汁を楽しめるのは来年の2月13日、府中市民のための小林弘幸先生の講演以降になります。

この連載ではこの後も府中産野菜のことや撮影のこと、小林弘幸先生の理論などいろいろなことに触れて、このプロジェクトの全容をご紹介していきます。

■府中市×ウェルビーイング100 食育プロジェクト
report1「試作会」