【BOOK】「おいしい循環」生ごみを捨てない暮らし

よく生きるためのいい話をお知らせする「wellbeing topics」、今回は「おいしい循環 生ごみを捨てない暮らし」のご紹介です。環境問題、一番身近に感じられる気候変動の脅威は夏の暑さですが、正直まだ「私に何ができるの?」と思いますよね。できるとか、できないとか、そんな思いに囚われている方におすすめしたい一冊です。

著者:たいら由以子
婦人之友社
価格:1,760円(税込)
サイズ:A5判
頁数:128ページ



「待つ」「変化を楽しむ」「世話をする」というシンプルな行為がもたらす深い充実感

たいら由以子さんの『おいしい循環』は、台所から始まる小さな楽しみが、社会を変える大きな循環へとつながっていく物語です。コンポストや環境保全の取り組みは「誰かがやること」と思いがちですが、気候変動はすでに私たちの暮らしを脅かしています。「私が何かやったって何も変わらない」と、つい考えがちですが、できるできないではなく、すぐ隣にこんなに面白い生活があったのかと気づく場は、意外にもキッチンだったのです。たいらさん自身も、試行錯誤を重ねるなかで「LFCコンポスト」を立ち上げました。その背景には、身近な生活から持続可能な社会をつくりたいという強い思いと、数えきれない失敗や工夫の積み重ねがあります。

本書では「半径2kmの栄養循環」というユニークな視点が提示されます。「地球」なんて大きなことを考える必要はないのです。この小さな範囲でそれぞれの家庭で生ごみをコンポストにし、野菜を育て、その野菜を食卓に並べる――その循環は驚くほど身近で、誰もが参加できるものです。それが大きく広がっていったら……。
本書では、コンポストの始め方や続け方、堆肥を使った野菜の育て方、そしてその野菜を使った料理までが丁寧に紹介されており、読者は実践の具体的なイメージを持ちながら読み進めることができます。 たいらさんの語る「おいしい循環」は、単なる環境活動のマニュアルではありません。そこには、暮らしの中で生まれる小さな気づきや喜び、そして人と人をつなぐ温かな物語が息づいています。魅力的な微生物の世界にも目を開かれます。
生ごみを捨てない暮らしは、環境にやさしいだけでなく、食生活に新しい発見と穏やかな豊かさをもたらします。これは「待つ」「変化を楽しむ」「世話をする」そういうシンプルな行為がもたらすウェルビーイングの話でもあるのです。

●著者紹介
たいら由以子
福岡市生まれ。ローカルフードサイクリング(LFC)代表。1997年から段ボールをはじめとしたコンポストの普及・研究に取り組み、2004年にNPO法人循環生活研究所を設立。現在は理事。2019年バッグ型コンポスト開発を機にLFCを設立。NPO法人日本環境保全ボランティアネットワーク理事、生ごみ焼却ゼロプラットフォーム共同代表。LFCコンポストhttps://lfc-compost.jp/?srsltid=AfmBOorhr8AyZZ8x1K-LXzKe54QLIsmut-nFQhd8WPtHzdyAzxVyVk17