「自分を変える、周りを変える、どちらが生きやすいですか?」(ゲスト:ミシュランガイド東京2020〜2022 一つ星掲載店「sio」オーナーシェフ/鳥羽周作)【後編】

これまでになかった視点や気づきを学ぶ『ウェルビーイング100大学 公開インタビュー』。第9回は、ミシュランガイド東京2020〜2022 一つ星掲載店「sio」のオーナーシェフであり、実業家でもある鳥羽周作さんです。「幸せの分母を増やす」をモットーにしているという鳥羽さん。その根底には「料理でみんなをハッピーにする」ために、自分を変え続けてきたという他者への愛がありました。
今回は前・後編に分けてのご紹介です。大きな学びがあって、とにかく面白い「鳥羽ワールド」をご堪能下さい。

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【後編】「幸せの分母を増やす」その終わりのない旅に料理で挑む

鳥羽周作が厨房から飛び出した理由は?

酒井:越境しながらの活躍を見ていると、業界を変える異端児みたいな、破壊してまたつくり直すみたいなアプローチもあるんですよね。でも、基本的には愛ですね。

鳥羽:料理って衣食住のうち一生なくならないもの。さっき言ったプラットフォームのようないろんな手立てで、どこでも手の届く存在にしていく、シェアできるようなものにして、たくさんの人がハッピーになるような仕組みをどうつくるかみたいなことをすごく考えています。そうなってくると厨房で料理作るだけというわけにはいかないなと、2年前からずっと考えてて、今は厨房にいない。で、当時はいなかったことで「なんだよ、鳥羽さん、テレビばっかり出て全然店にいなくて、味も美味しくねえな」って書かれちゃって。確かにそういう時期もあったと思うんですよ。やっぱり自分が店にいないことでのリスクってメチャクチャある。僕がいない、という印象だけで美味しく感じなくなるってこともあるし、現実的にやっぱりクオリティが下がったこともあるんですけど。そのフェーズは絶対に! 乗り越えなきゃいけないところなんですよ。それはなぜかと言ったら、幸せにする数をお店の1日20人から、100万人を目指すとしたときに、自分がやるべき仕事は厨房にはないってこと。ただ、それを自分自身が受け入れて飲み込む作業もメチャクチャ苦労するし、それを実現可能なレベルに持っていくまでやっぱり難しくて。ただ、それが料理業界外の人に評価されて、料理業界の人になかなか理解されないっていうギャップがまだあって自分の力不足も痛感してましたし。今だってまだまだですけど、自分が変わらないと、人は変わってくれない。人を変えるのはとても難しいから、まずは自分が実践する。自分に負荷をかけていく作業ってすごく大事だなあと思っていて。でもそれは、ある意味で成長し続けていくための、課題解決のひとつの、道の歩き方なんじゃないかなと思ってます。僕はそういう道を選んでるって感じですかね。

前田:ああ、すごいですねえ。

鳥羽:今日はちょっといい話、しすぎたな(笑)。

酒井:またテーマに戻していただいて。自分と周りはつながっていて、起点は自分が変わっていくことによって、周りは変わっていく。

鳥羽:自転をしていくことで、大きなうねりが外に回っていくみたいなことだと思ってるんで。自分がうまく変わることでうねりをつくって人を変える。まあ自分が変わるか他人が変わるかみたいな話とか、右に行くか左に行くかとなったときに、経験上、負荷がかかるほうが学びもあるし、その分、できることが増えるなっていうのがあるんで、常に負荷のかかるほうを選択してしまうドMな生き方しちゃってるなー(笑)

酒井:今日、伺っていると「自分らしさ」っていったい何なんだろうって。

前田:ほんと。

鳥羽:「自分らしさ」って自分が決めることじゃないんですね。これはスタイルとスタンスの違いがあって、自分の中で持つべきものはスタンスなんですよ。で、他人から見えるものはスタイルなんですよね。自分が表明しなきゃいけないのはスタンス。それは赤が好きだとか青が好きだとかで、人と比べない、自分はこれが好きだと表明すること。でも、他者から見たら「ああ、鳥羽さんってこういう感じだよね」「こうだよね」っていうのはスタイルなんですよね。そういう意味で「自分らしさ」っていうのは、人が決めることだと思っています。結局、他者がいなかったら、自分の輪郭なんてつくれないんじゃないかと。

酒井:ああ、水と油みたいな……。

鳥羽:そうそう。だからほんとに、たとえば、僕がとったばっかりの鰹だしだとしたら、相手の塩って人がいることで、初めておいしいねっていう輪郭ができる。他者との関わりの中でしか、自分の存在価値とか輪郭はつくれないんですよね。だから、他者に対しての想像力が絶対に必要だし。実際、世の中に自分がひとりしかいなかったら、おしゃれする必要もまったくないし、おしゃれっていう文化も服着る文化もなかったと思うんですよ。でも、誰かと関わることで、そのTPOが生まれて、正装としてのスーツとかがあるっていうのは、それは他者とのかかわり合いがあるからこそ生まれた文化がたくさんあるということ。だからそういう部分を意識して生きるってすごく大事なことだと思っているし、それが「自分らしさ」になっていくんじゃないかなと。やばいな今日、哲学者みたいな話になってるなあ(笑)

みんながハッピーならそれでいい

酒井:これ、すごく聴いてみたいんですけど、「ウェルビーイング」って言葉に対して、鳥羽さんはどういう印象をお持ちですか?

鳥羽:ざっくり、幸せ、幸福感みたいな感覚だと思うんですけど、僕は主観的な幸福感っていうのをあんまり持っていないんです。やっぱりみんながハッピーなことが嬉しいんですよ。ひとりで何やってもおもしろくない。ハーゲンダッツの新作のアイスを食べたときに「うまっ!」って思った瞬間の幸福感よりも「うまっ、これ誰かにすすめたいな」と思うことが幸せなんです。誰かがその先にいないと。僕の存在意義って誰かがいて初めて成り立つから。僕が世の中に出てるのはレシピを使ってくれてる人がいるからだし、料理を食べてくれる人がいるからで。そういう人たちがいなかったら、僕なんかただのおっさんなんで。だからこそ、そういう人たちとの関りの中で得る喜びが僕のウェルビーイングの一つのカタチなのかな、と。

酒井:われわれもこのインタビューを続ければ続けるほど、ウェルビーイングが何だかわからなくなっているんです。

鳥羽:人それぞれの価値観がある中で、人の幸せって計れないし。みんなそれぞれの幸せ体験ってあるからでしょうね。それでいいんじゃないかなって僕は思います。最初におっしゃった「正解がない」っていう話がまさにそうで。他人の幸せに「これが幸せ」なんて言い切れることは一生ないし。だからこそおもしろいというか、だから「たくさんの人を幸せにする」っていう終わりのない旅に僕らは料理で挑める。モチベーションが枯渇しないでいられるものを選んだんです。「500億円稼ぎたい」なら、500億円稼いだら終わっちゃうわけじゃないですか。でも、料理を提供する人の幸せって常に変わっていくし増えていくから、永遠に終わらない。そこに巡り合った自分はほんとうに幸せだなと思う。そう思って毎日生きてます。

酒井:鳥羽さんが料理に魅せられ、はまった理由が今のお話でピタッと合致しました。この質問に対してここまで即レスの人っていないです。

鳥羽:僕、ほんとにやりたいことないんですよ。

前田:わあ、ステキ。

鳥羽:ほんとにやりたいことはシンプルに「みんながハッピーならそれでいい」ってことで。僕、2つの会社の社長をやってるんですよね。最近、社長が給料を決めていいんだってことも初めて知ったんですが、興味がないんですよ、そういうことに。ほんとにやりたいことはお金を稼ぐことじゃなくて、みんながハッピーになること。ただ、その一方で現実的に自分も人も幸せにするのにお金がないとダメだってこともわかってるんですよ。そんなに甘くないから。ロジカルな部分も持ちあわせてるんだけど、起点はほんとにピュア中のピュアしかなくて。シンプルなところにしか物事の判断基準を置いてないから、何を何回聞かれても絶対全部同じ答えになるのは強いんです。幹が強いというか太いんです。

酒井:そこは、ロジカルの前にフィジカルがあるんですか?

鳥羽:心のフィジカルみたいなところじゃないですか。メンタルのフィジカルが強いって感じだと思います。

酒井:乗り越えていくためのフィジカルでありメンタルであり。

鳥羽:そうですね。あとはやっぱり積み重ねだと思いますね。積み重ねに耐えられるだけのフィジカルとメンタル。最初は小さい山を乗り越えていって。会社が潰れそうなときに「お金ないけどお客さんのために尽くせ」「コロナでもいいから、会社潰れてもいいから、お客さんのためにやろう」って言って乗り越えた結果、今がある。「今の自分たちがこうやって応援されてるのは、これがあったからなんだな」というのがわかってくると、じゃあもっとそこに振り切っていこうよって。「うちの会社はとにかくお客さんが喜ぶことをやればいいんだよ、みんな心配することない。オレがそこはなんとかするよ」みたいなことがどんどん積み重なっていくと、限りなく真理に近づく。他者を喜ばせることが結果的に自分の幸せにつながるってことで、今はいっぺんの曇りもなく生きていられる。それが僕らの強さなのかなと思ってます。

酒井:そこはビジョンが揺るがないってことですね。みんなに幸せになってほしい、喜ばせたいっていう。

自分たちの存在意義はブレない

鳥羽:まあ流行りの言い方だと、自分たちの存在意義というか、パーパスっていうことだと思います。人を幸せにするっていうのが僕の存在意義で、そのための手段として料理がある。だから何回インタビューされても、そこは同じなんですよ。全部そこに紐づいちゃうから。ただ、登り方は何パターンもあるという話です。たとえばビジネス側面もあれば、クリエイティブ側面もあるし、建築の話かもしれないし。何のかたちでも最後はここに行くっていう。まあ丸ですね。真ん中にその意義があって、全部の角度から多角的にやれるようにしてるっていう。

前田:すごいすごい。

鳥羽:しかもそこに対しての熱量が、値段とか環境とか状況とか、関係ないんですよ。これはいつも社内でも言ってますけど、忙しいとか大変とか値段が高いとか安いとかじゃなくて、常に目の前の「おいしい、を必要としてる状況」に対して、ワクワクできてコミットできるかっていうことがメチャクチャ大事で、それが本質的に好きかどうかって話だと思うんですよね。で、僕はコンビニさんのアイスを作るのと5万円のコースのお皿を作るのが全く同じ気持ちなんですよ。食材原価の制限などはあるにせよ、おいしくするっていう作業では、まったく関係ない。そして、原価などに制限がある中で、唯一制限がないのが思考なんですよね。考えるには場所もいらないし、原価もかからない。僕の中でいちばん公平にいろんな物事に発揮できるものが思考だと思ってます。

酒井:思考という無限の力で、おいしい、喜ばせる。ここ「オレンジページ」もまた、いろいろなアプローチで取り組んでいますよね。

前田:そうですね。おいしさ、をいろんなかたちで届けたいと考えているっていうのは同じです。

鳥羽:そうですよね。もしかしたら、オレンジページさんがやってきたことの拡張ってもうちょっとあるのかなあと思ってて。ただ単純にレシピを教えてこういうふうにやるってところから、そこをどういうふうにシェアできるような余白を残していくのかとか、もうちょっとお客さんと一緒に作っていく、往き来ができるコンテンツにどうしていくのかとか、レシピを通してどんな世界をつくっていきたいのかとか。

前田:正にそうです。

鳥羽:考えた人もアレンジした人も作った人も、もっとみんながレシピで幸せになる仕組み化みたいなこと。僕にとっての最大の価値はレシピだと思ってるので。いろいろ考えていくと、感動体験の設計図の作成とも言える。それはレシピだけじゃなくて、仕組みとして。「じゃあ居酒屋をどう感動させますか?」っていうコンテンツの設計図もレシピだって言い方もできるから。僕らは感動体験の設計図の会社になるって思ってて。僕がやったら「オレンジページ」をどうやっていくかなあ、と考えますね(笑)。

酒井:今、そこのヒントがウェルビーイングなんじゃないかっていう。レシピがあることによって、それを「あ、私にもできそう」「作ってみた。家族が美味しいって言ってくれた」みたいな、これの積み重ねで、たぶん、料理が上手になっていくって、そういう成功体験の積み重ねなのかなって。

鳥羽:で、もっと料理したい、料理と出会ったことで人生の楽しみが見つかる、誰かに作っておいしいって言われた、ああ嬉しいな、もっと勉強しようみたいな話っていうのがテキストだけの話じゃなくて、もっと大きなプラットフォームに多角的にある……。

前田:この「ウェルビーイング100」ってサイトも、料理のレシピではないんだけど、こうやっていろんな人の話を聴いて、自分を幸せにするレシピみたいなのを考えていくという側面もあるんですよね。

鳥羽:いや、まさにそう。幸せのなり方って人それぞれで、「どうやったら幸せになるんだろう」っていう、その思考のヒントがここにたぶんいろいろあって「あ、私は鳥羽さんぽいな」って人もいれば「前のゲストの人っぽいな」っていう、教材になってもらうためのコンテンツだと思っていて。何かそこからヒントを得て、それを自分なりに組み込んで、自分のフィルターを通すっていうのは、まさにアレンジレシピと一緒で。これをレシピだとしたら、それを踏まえて「私はもうちょっと砂糖多めだな」みたいなアレンジして「鳥羽さんはこうだけど、私はこの鳥羽さんにこの考えをプラスして……」というのをそれぞれが持つことで、その余白を自分にカスタマイズできるってことがすごく大事なのかなと。

前田:ありがとうございます。ほんとにそう思って私たちやっていて。

酒井:いや、すごいおもしろいですね。われわれもこのメディアを通じて「幸せってこうあるべきだ」っていう答え探しをしちゃうと、新しい呪縛が増えるだけで、そこを気をつけなきゃいけないと思っているんですが、そこは自分の好みのレシピを選んで、さらにアレンジレシピで自分用にチューニングすればいいっていう、ほんとにそうですね。

鳥羽:そうですよ。だってそれぞれの物差しも違うし、人によって大さじ1なんて違っていいわけだから。あくまでも僕は、この焼きそばは大さじ1のソースが好きなんだけど、YouTubeで「このレシピで作るとちょっと甘いな」ってコメントする人いるんです。で、「どうぞ甘くしないでください」って僕は思うわけですよ。「鳥羽さんのレシピよりも甘くないのが好きです」って言ってくださいって。別にこのレシピ通りに作る必要なんかまったくなくて。1回目はその通り作ってもいいと思うんですよ。でも、そのレシピを作った結果「うちはネギがもうちょっと少なくて、胡椒多め」。そういうの、素晴らしいじゃないですか。

酒井:その物差しを持ってるってことが

鳥羽:だってレシピなんて変わっていくもんだから。同じレシピでずっと作り続けるなんて意味はまったくないですから。だからよく「門外不出のレシピ、公開して大丈夫なんですか?」って言われるけど、そんなもんあるわけないから。人によって物差しが違うんだから。レシピは生き物で変わっていくんだから。レシピなんてフリーソフトでいいわけですよ、別に。でも、結果的に世の中幸せになるってことは需要があったってことだから。なんだかんだ言って、お金ができる場所がどっかにあるわけで。だから最初からそこを目指して作ると、つまんないコンテンツになっちゃうから。このサイトだってそうじゃないですか。これでお金を稼ぎたいわけじゃなくて、みんながこれでハッピーになってくれたらいいですよねっていう。じゃあどうぞって話じゃないですか。その敷居の低さみたいなところは大事ですよね。

酒井:鳥羽さん、すごく幹の太い愛がある。料理家であり、クリエーターであり、アーティストであり、ビジネスパーソンでもあり。

前田:哲学者でもあり。

酒井:で、スポーツマンでもあり。

鳥羽:そんな免許ね、今度からぶら下げて歩こうかな(笑)。名刺にそういっぱい書いとこうかな。

前田:最近、いろいろ話をうかがっている中に、幸せになるには自分を離れたほうが幸せ、ウェルビーイングに近くなるんだって話がちょっとあったんですよ。それを思い出しました。自分を離れていくほうが近づける。

鳥羽:そうですよね。他者との関わり合いの中での幸福感こそが、実は最終的には自分に返ってくる幸せなんじゃないのかなあ。誰もいないところでめっちゃおいしいパスタ作って、「うま!」とかやったとしても、まあ、おいしいよねそりゃ、っていうだけの話だけど。「うま!」って誰かが言ってくれることを想像して作って、「シェフの言うとおりやったらおいしかった。最高でした」と言われたら嬉しいなあ、みたいな話でしかないんですよ。料理を出して「シェフ、これ、すごくうまい! 感動したよ」って言われて「いやあ、昨日、寝ないで仕込みしてよかった」みたいな単純な話ですよね。僕は単純明快に物事を考えているんですが、それを成し遂げるためには細かいことをしなきゃいけない。だからすごくロジカルに考えて、細かくていねいにやってるけど、やりたいことはいたってシンプルです。

以下、鳥羽さんがみなさんのご質問にお答えします。

Q:お話をうかがい、勤勉でエネルギッシュで、私の中で鳥羽さん最強説が生まれつつありますが、苦手なことや、やらなければと思いつつ、ついモタモタしてしまうようなこと、あるのでしょうか?

鳥羽:家での生活が苦手(笑)。外で全部出し切っちゃってるんで、家の電気消すとか、オレの中にないんですよ。その労力はオレはもう使わないって勝手に決めちゃってるんで。使ったものをちゃんと元に戻さないし、非常に家ではだらしないんで。今年は洋服を買いすぎて家に洋服があふれちゃってて奥さんに怒られてます。今年は洋服を買って勉強するって年にしているんです。他ジャンルから学ぶことには大きな発見があるので、今年は服をやりきろうと。でもそれをやったせいで、洋服業界の人とめっちゃ仲良くなって、おもしろい感じになってますね、今。

Q:鳥羽さんのお話、感動です。忙しすぎませんか?

鳥羽:忙しすぎますね。でも、今の自分というのは他者の目線があってこそ見えてる姿だと思っているんで、必要とされてる限り「忙しいから嫌だな」みたいなのはあまりなくて、(この忙しさを)喜んじゃってるかなあ。ただ、僕の周りの人間は「忙しすぎます」ってふたこと目には言ってますけどね。自分でも忙しいとは認識していて「何なのこれ?」とか思います。なんか自分で忙しくしてるみたいな、いちばんダメなやつですね(笑)

Q:家族の食事を作るとき、つい健康や栄養のことを考えてしまい、今ひとつ喜ばれていない気がします。家族の好みと健康を両立させるためのよいアドバイスがあればお願いします。

鳥羽:健康食でも、おいしく作れないってことはまずないです。それとは別に1回の食事で全部を精算する必要はなくて、食事の中で、これはちょっとおいしさに寄ったものだけど、その分、サラダで緩和しましょうよっていう、食事の中での組み方次第ではできると思うんで。ちなみに僕の最近のおすすめは、炊飯器で作る参鶏湯。手羽元とか入れて、鶏ガラスープの素を入れて、お酒とお水と生姜を入れて、キノコとネギとか適当な野菜を入れて、炊飯器で炊いたら、もうホロホロの肉ができててめっちゃ美味しいのでオススメです。簡単で美味しいから2日に1回は自分で作って食べてます。あとは「美味しいけど、体にはどうなんだろう」ってものを食べたら、運動するとかでもいいと思います。食事だけという面で捉えないで、もうちょっと全体で考えていいと思いますし。
でも、健康に配慮して家族に食事を作っているという愛が、僕はステキだなあと思う。「お父さんも息子も食えよ!」と思っちゃいますけどね。「お母さん、頑張って作ってんだろう」って、ほんとそう思っちゃう(笑)

鳥羽周作(とば・しゅうさく)さん
1978年、埼玉県生まれ。Jリーグの練習生、小学校の教員を経て料理の世界へ。有名店で修行を積み、2018年にオープンしたレストラン「sio」のオーナーシェフに。「sio」はミシュランガイド東京2020から3年連続一つ星店として掲載され、多くの人に愛される人気店に。現在は業態の異なる5つの飲食店を運営する会社のトップとして、また、他企業のコーポレートシェフやコラボ製品の開発、SNSを通じたレシピ企画など、レストランという枠組みを超えて「おいしい」を届けている。