「自分を変える、周りを変える、どちらが生きやすいですか?」(ゲスト:ミシュランガイド東京2020〜2022 一つ星掲載店「sio」オーナーシェフ/鳥羽周作)【前編】

これまでになかった視点や気づきを学ぶ『ウェルビーイング100大学 公開インタビュー』。第9回は、ミシュランガイド東京2020〜2022 一つ星掲載店「sio」のオーナーシェフであり、実業家でもある鳥羽周作さんです。「幸せの分母を増やす」をモットーにしているという鳥羽さん。その根底には「料理でみんなをハッピーにする」ために、自分を変え続けてきたという他者への愛がありました。
今回は前・後編に分けてのご紹介です。大きな学びがあって、とにかく面白い「鳥羽ワールド」をご堪能下さい。

聞き手/ウェルビーイング勉強家:酒井博基、ウェルビーイング100 byオレンジページ編集長:前田洋子
撮影:原 幹和
文:中川和子


【前編】自分をチューニングする細やかな想像力、環境を変化させる大胆な越境

サッカー選手になれなかった喪失感を抱え、
熱中できるものを探していた

酒井:『ウェルビーイング100大学』は、オレンジページの実用情報とは異なり、「よく生きるってどういうことだろう?」という、単純だけど正解がない問いについて、各界で活躍されている方々にお話を伺っているコンテンツです。本日は「自分を変える、まわりを変える、どちらが生きやすいですか?」というテーマでお話を伺ってみたいんですが、もう少し補足しますと、特に仕事での場合がいちばん多いのかなと思うんですけれど、今の状況がイマイチ自分にフィットしていなくて、日々悶々と暮らしているときに、自分を変えていけばいいのか、自分のことは変えずに、環境を変えたり違う環境に飛び込んでみる、どちらが気分よく生きていけるのかという趣旨です。
鳥羽さんといえばJリーグの練習生から小学校の教員を経て、31歳で料理の世界に入り、今やミシュランガイド東京2020〜2022 一つ星掲載店「sio」のオーナーシェフという異色の経歴の持ち主です。まず、なぜ料理人になろうと思われたのか伺いたいのですが。

鳥羽:サッカーをやっていて、結局、芽が出なかったんです。そこそこのところまでいって、人生の9割をそれに費やして生きてきたので、その喪失感みたいなのがメチャクチャあって「次、何やろうかな?」と。どうしようどうしようと考えているうちに、料理をするのも多少は好きで、ファミリーレストランでバイトしたら、マニュアルをいじって「こっちのほうがうまくね?」ってやっちゃうタイプ。親子丼は卵2個なのに、勝手に卵3個使っちゃうみたいな。やっぱりこだわりがあったと思うんです。それで料理をやろうと。もともとは服とか家具が好きだったんで、カフェで働いてたんですけど。ただ、一応、ちゃんと料理を学んでからカフェをやるほうがいいじゃんって、料理の世界に行ったら、そこでバーッと進んじゃったという感じですね。

酒井:まさにフィットした?

鳥羽:そうですね。天職だと思ったんですね。「あ、選ばれちゃったな」みたいな。

酒井:サッカー以外で初めて夢中になれた?

鳥羽:サッカー選手になれなくて「なんでなれなかったのか?」というのがわかったうえでの料理人だったので「もう2度とあんな思いはしたくない」と、サッカーのときにはなかった“迷いのなさ”みたいなものがあったし、今もあります。突き抜けてイカれてましたね。「料理人をやる!」と決めたら、次の日にはもうレストランで働いていましたから。

相手との“共通言語”を獲得し、それを使う……
そこにあるのは“相手への想像力と愛”

酒井:サッカーでの悔しさがベースになっているんでしょうか?

鳥羽:サッカーで選手になるという目標を叶えられなかったことで「それはどうしてか?」と考え抜いて「こうじゃん」とわかってから料理の世界に入ったので、精度が高くなりました。

酒井:Jリーガーとか日本代表をめざすという目標を掲げて、それに対して、自分は何が足りていなかったのかを熟考された?

鳥羽:今ならそういうふうに考えられるんですけど、当時は20代で、プロになりたいけど、何をやったらなれるかとか、ゴール設定をして、そこから順を追って何をすればいいかなんて考えられないし、そんな思考のことを教えてくれる人もいないわけで。料理業界に入っても、当初はそんなことは考えてなくて。漠然とミシュランガイドに載る店のシェフになりたいみたいに考えていただけなんです。で、独立したときに、業界外のメンバーと会社を創ったんですが、最初に会社の会議をするときに、僕だけがメンバーの中で何の共通言語も持っていなかった。今日のアジェンダ※(1)とか、タスク※(2)とかテレカン※(3)とか言われて、「何のこっちゃ?」みたいな感じで。

※(1)アジェンダ……会議の議題や議事項目をまとめたもの
※(2)タスク……行うべき仕事や作業
※(3)テレカン……テレカンファレンスの略。遠隔会議

「ヤバ!」と思って、グーグルで調べながら、その日から「いやー、タスク多め」とか、「アジェンダがすごい」ってとりあえず言ってみて、それでなじんで、「ああ、なるほどね」と。彼らと共通言語が増えることで、より目標の解像度を高めていって。今はおもしろいことに、企業と仕事するときに「味のKPI※(4)を決めて〜」とか言うと、「シェフでそんなことを言う人、いるんですか」みたいになるわけですよ。相手との共通言語を持つことで「自分たちの土俵の話をわかってくれてる人なんだなあ」と思ってもらうことは大事で。だから僕、日本のトップレベルの建築家の人もメチャクチャ仲いいんです。建築、めっちゃ詳しいんで。

※(4) KPI……「Key Performance Indicator」の頭文字。重要業績評価指標

酒井:そうなんですか。

鳥羽:「シェフでそんなに建築に詳しい人はいなくない?」ってなって、みんな仲良くなって。相手の土俵の共通言語を、ちゃんと自分なりに勉強していく。結局それも、他者への想像力と愛なんで。たとえば、共演する人の著書とかSNSを見て、何が好きだとか「料理番組であれ食べてましたよね」とか。この見た目でキャラクターもこうなんですけど、割と勤勉ですよ、僕は。

まず「自分が変わる」

酒井:今日のテーマからすると、まずは相手が使っている言語を自分でも使ってみるというところから。

鳥羽:それは大事にしてますね。自分を変えていくか、まわりを変えていくか、環境を変えていくかみたいなとき、答えはもう最初からはっきりしてて、僕は自分が変わる以外の方法はないと思ってるんですよ。結果、環境も変わると。僕は自分が会社をやってて、たくさんのスタッフがいて「オレはこのやり方だから、みんなもこれでやれよ」みたいなことは難しい。共通言語を持つっていうのも、自分からの歩み寄りじゃないですか。だから、自分が主体になって相手にチューニングしていかない限り、けっこう難しいなと思う。で、環境を変えるっていうのは根本的な解決にはあんまりならないんで。どこに行っても、いつかは自分と向き合う時間がくるっていう中で、いつそれをやるのかっていうこと。もちろん、環境を変えてうまくいく場合もあると思います。自分を変えるってすごい負荷がかかることなんで、環境を変えちゃったほうが楽なんだけど、いつまでもそれはずっとやり続けられなくて、どこかで自分を変えなきゃいけない。僕の感覚で言うと、負荷が高いことほど学びがでかい。自分に負荷をかけて成長機会をつくることで、成長した結果、まわりも見方も変わってくるし、見え方も変わるし。自分の成長によって、相手に与える影響力も変わるっていう順番だと思っていて。環境を変えることで、もちろんマッチングしたときに即、能力を発揮することもあるんだけど、逆に言うと、環境が合わないと能力が発揮できない状態よりは、どんな環境でもよくできるほうが本質的には強いんで。

酒井:鳥羽さん、さすがだなあと思うのが、まず結論から言うところ!

鳥羽:物事はシンプル。自分だけで生きていくことって、世の中にほとんどない。ひとりで完結できることなんて、ものすごく少ないですよ。自分のために料理を作って食って、お金になることなんかない。誰かのために作って初めてお金にもなるし、そこに幸福感もあるわけじゃないですか。だから、他者への想像力以外ないんですよね。たとえば「すごく嫌われてるな」と思う人に「なんで嫌いになられちゃったのかな?」って原因を探っていく。「いつもおはようって挨拶しなくてゴメンね。それがよくなかったんだね」って、それを改善すれば仲良くなれるわけじゃないですか。結局、何が原因かと突き詰めたら、自分の中にしかないことのほうが多い。理不尽に相手が(自分のことを)嫌うこともあるかもしれないけど、それすらも理由がわかれば改善できるわけじゃないですか。相手に目を向けて調べるっていう作業はすごく大事。他者への想像力=愛なんですけど。よく僕は「愛だ、愛だ」って言ってて、すごく青くさく聞こえるけど、それを細かく因数分解していくと、他者への想像力だったり「何を求めているか」という情報をキャッチすることなんです。相手の情報をキャッチすることで「何が相手にとっていいことなのか」を知る手がかりになるから。つまり情報を取るためには、相手に目を向けないといけない。それは、相手を気にするという愛情が必要だと、そういう順番で考えてますけどね。

作る料理にジャンルがないのは
「客が食べたいものを出したいから」

酒井:それは料理で特に求められる能力でもありますね。

鳥羽:そうですよ。カレーを食いたくない人にカレー出して「うち、うまいでしょ?」って言っても全然おいしくないじゃないですか。料理は承認欲求だったり、アーティスト感覚でやっちゃうとよくないなあと思っていて。やっぱり他者への想像力とそれを具現化するための技術が必要で、僕がジャンルがない料理を作ってるのも、料理というツールを使ってお客さんを喜ばせたいって中で、ジャンルが必要なのかどうかという話。「フランス料理でお客さんを喜ばせたいんです」ってわけじゃなくて、何でもいいけど、お客さんが喜んでるってことが大事で、それはチャーハンでも餃子でもラーメンでもいいしと思ってるんです。

酒井:そういう鳥羽さんの哲学はどういうふうにできていったんですか?

鳥羽:やっぱりお客さんのことを考えていくと「こういうことなんだな」ってあると思うんですよ。相手からのフィードバックを常に気にして「こういうふうに言うと人は喜ぶし、わかりやすいんだな」っていうのを実感しながら、ひとつひとつの場面でめちゃくちゃていねいに生きてるんですよね。だからTwitterもタイムラインにリツイートとかあんまりしないんですよ。たとえば、「今日、鳥羽さんのレシピで料理を作りました」ってたくさんあるのを、リツイートだけする人ってたくさんいるわけですよ。フォロワーが多い人で。で、その人のタイムラインを見ると、自分のファン自慢みたいに見えてくる。「オレの料理、こんなに作ってる人がいっぱいいるぜ」みたいな話になっちゃう。で、僕はそういうのがあんまり好きじゃなくて、どっちかって言うと個人の投稿に対してリプを返していくっていう、その人と直のやり取りにする。Twitterでも1対1の関係性を大事にしたいと思ってる。とくにコメントはしないけど「オレのファン、こんなにいるんだぜ」っていう承認欲求の行為なのかどうかで、人間性が出るじゃないですか。僕はリツイートばっかりしてる人は、ファンの多さを言いたい人なんだなと思うし、僕はそうじゃないから、料理を作って投稿してくれた人に思いが届けばいいわけで、見せびらかす話じゃない。それで「鳥羽さんからコメントきたよ。超嬉しいっす」ってなったときに1対1の関係性が100対1みたいな話になり、1万対1みたいな話になっていく。

料理を通して幸せな人を増やすために
必要なのは“チューニング”

酒井:鳥羽さん、今、いろんな企業の方とかクリエイターとコラボしていらっしゃいますが、企業が鳥羽さんに声をかけたくなる理由が、今の話でわかります。

鳥羽:コミット力が高いのだと思うのです。それも、結局は相手に対しての思いの強さじゃないですか。たとえば、どこかのコンビニさんと一緒にやるっていったら、そこのことをメチャクチャ勉強して。僕、コンビニエンスストア、毎日2店舗は絶対行ってるんですよ。で、値段も知ってるし、どういうものが並んでるかわかったうえで仕事を受けるから、コンビニの人より詳しいんですよ。レストランでも下準備するのってそうじゃないですか。今日、来てくれるお客さんに、なるべくいいものを出したいのは当たり前なんだけど、だからといってお客さんが来て、今から魚さばきます! って言っても、1時間待って刺身出されてもねえ、って話もあるわけで。だから、味のクオリティを落とさないところまで準備して、早く出したほうがお客さまは喜ぶし、それがすごく相手のことを考えた仕事だと思うんですよ。トータルで見たときに相手にとって優しいかどうかは、すごく大事な話。自分のやりたいことをやって、その価値観を共有できる人たちと生きていくのか、そうじゃなくて、相手の土俵で価値観を共有できるように自分がチューニングしていくのか。さっきの話でいうと、それができれば、よりたくさんの人をハッピーにできる可能性がある。だけど、そんなことなんかしないっていう選択にすると、ほんとうにマッチングしたとき以外は、ハッピーにならない。だから、幸せの総和を増やしていくっていう作業は、チューニング無しではできないことです。僕自身の人生のモットーである「おいしいで幸せの分母を増やす」って意味では、自分が変わっていくことがごくごく自然だと思ってますね。

酒井:チューニングっていうのは、相手の状況や波長みたいなのに合わせていくってことですか?

鳥羽:そうです。自分が合わせていくってことです。たとえば、自分の両親にはちょっと塩少なめ、でも、中学校3年生には焼肉のタレをかけちゃう。それって自分が、どのスタンスを持つかってことで。「自分の作りたい料理で喜んでもらいたい」というスタンスだとそれが相手が欲しくないものの場合は「いやいやいや、焼肉のタレはないです」ってなっちゃう。そうすると「鳥羽さんの料理が食べたいです」っていう人だけしか喜ばせられない。僕のことを知らない人が「今日はここでチャーハン食いたいんですけど、ありますか?」ってときに「いや、うちはフランス料理なんでチャーハンはやりません」ってなるか「やりますよ」ってなるかというのは、どの領域まで人を幸せにしたいかによるんじゃないですか。

酒井:なるほど、自分の技量や世界観の押し付けではなく……。ただ、料理ってとってもクリエイティブな世界だと思うんですけれど、クリエイターに対する一般的なイメージって「オレの世界観」みたいな。

鳥羽:それはクリエイターとアーティストの違いで、アーティストは、その行為なり作品を作る視線に他社への想像力は存在しない。僕が思うクリエイターっていうのは、クリエイティブを手段として、相手の求めるものを提供し、課題を解決する人。手段としてクリエイティブがあるという話と、表現としてクリエイティブがあるという違いだと思います。僕らはクリエイティブという手段で、課題を解決するとか人を幸せにするっていう意味でのクリエイターだと思ってて。クリエイティブが表現になってくるとアーティストになる。そこは自分の中で明確に棲み分けてます。

「料理人=シェフ」という定義を変える

酒井:編集会議で鳥羽さんの名前が出てきたときに「鳥羽さんって、料理人っていう枠なんだっけ?」という話になりまして。

鳥羽:“料理人”という定義の話になってくると思います。シェフ=料理人というふうになっちゃうと、他に料理に関わることをやってる人たちは何なの? という話になっちゃう。うちの会社では、料理人の定義をもうちょっと広げて、料理を届けるサービスマンも料理人だし、広報担当の人も料理人のひとりだと思ってる。僕らは料理を通して人を幸せにする会社なんで、そのことに携わる人材が“料理人”になるべきだなと思う。今は時代が変わってきちゃってるんで、その定義は変えていかなきゃいけない。逆にシェフしか料理人と認めないという、その旧態依然のヒエラルキー的な構図が、本来は単純作業が向いてるやつも、シェフを目指さなきゃいけない、みたいな業界になってることが問題。もうちょっと多様性を受け入れる、「受け皿としての料理人」という定義が必要なのかなあとか。そう思うからこそ、自分がまずそれを実践して、業界の中を変えていく。まさに自分が変わることで他者が変わっていく、もしくは環境が変わっていくんです。

酒井:今のお話を伺っていると、時代の気分と鳥羽さんがチューニングしているようにも思えます。

鳥羽:そうなんですよね。課題って常に時代の変化の中で生まれるものだと思っていて。たとえば産業が発達して、通信が発達して、いろいろなものを見たい要求が高まってテレビが生まれた。ある課題や欲求を解決する手段として創造的なアイデアが生まれ、それが工業製品とかサービスとして実現されていくみたいな順番が必ずある。意味もなくものが生まれるってことはなくて、たとえば、おなかがすいたら気軽にいつでも食べられるようにコンビニエンスストアができたのもそうだし。ただ、課題を解決する創造力を持ってる人はたくさんいるんだけど、今、何が課題なのを見つけていく作業は、意外にみんな得意じゃないかも。

前田:そうですね。

鳥羽:その課題を見つけるには、常に世の中の流れだったり、他者を見ていかなきゃいけない。「コロナ禍で家でゴハンを食べる人が増えたから、じゃあ、テイクアウトだったり、レシピが必要だよね」と。「そういうニーズがあるから、自分たちはレストランじゃなくて、そういうこともやっていかなくちゃいけない」って、自分たちが変わることで課題を解決する。課題が解決すると、そのやり方は当然、広がりますよね、求められてるから。僕たちはそんなに特別なことをやってるわけじゃなく、淡々とみんなが求めてるものを人より早くやってるって感じですね。

酒井:衝撃的なのが、レストランを“プラットフォーム”※(5)っておっしゃっていること。

※(5)プラットフォーム……ものごとの基礎、基盤。サービスを提供したい人とサービスを利用したい人をつなぐ場を提供するビジネスをプラットフォームビジネスという。

鳥羽:Twitterとか、お店がニュースでメチャクチャ出るじゃないですか。いろいろなことをやってるから。僕のことを「こいつはほんと、マーケティングおじさんだよね」とかすごく書かれるんですよ。「僕はそうだよ」って思ってるんです。で、そういう声に対してセンスがないなあと思っちゃうのは、飲食店って、お客さんが求めるものを提供します、お客さんが来ます、で、美味しかったからお金を払います、っていう市場主義に基づいているわけじゃないですか。だから「お客さんが何を求めてるか」って考えるのって、マーケット目線じゃなくてどうやるんですか。まったく需要がないところでカレー出したって、それは売れるわけないじゃん。なんで「マーケティングおじさん」が揶揄の代名詞みたいになってるのかわかんなくて。そこらへんが、時代が追いついてないのかなあって気はします。

酒井:そういう批判をする人はコンフォートゾーン※(6)にとどまりたいんでしょうね。

※(6)コンフォートゾーン……居心地のいい場所

鳥羽:そうなのでしょうね。新しいことをやる人に対して、保守的な人がそういう見方をしちゃうのはわかるんだけど、そもそも料理がまずいのに、マーケティングがうまかったら店が満席になるっていうほど甘くないから。僕らの施策でお客さんが入ってるって思われるけど「いやオレら、本業ちゃんとやってるからね」と。料理人としての根本・基本はおさえながらも臨機応変に時代の流れに適応していくっていうやり方をとっているだけなんです。そのやり方だけで揚げ足取られちゃうなんてところは、まだまだ業界内、業界外含めてもっと変わってほしいところだから、そこは先頭切って自分がやりますよ。

酒井:鳥羽さんのユニークなところだと思うんですけど、業界を越えて越境しまくってるわけじゃないですか。そこでの成功があると、業界内評価なんてもういいよ、みたいな感じになるんですけど、料理人のベースとして絶対に越えなきゃいけないところもちゃんとやる、っていうことで、ミシュランガイドでも星をとる。

鳥羽:そうなんですよ。なんかやっぱり、料理業界に対する愛がメチャクチャあるんです。でも、それってなかなか理解されないんだけど。で、中から変えるのはとても難しいんです、やっぱり。だからもう応援できるようになろうと思っちゃってるんですよ、今僕がやっていることが当たり前になったり、シェフのあり方も様々になることで、みんながハッピーになる仕組みを広い視野で考えないといけないと思っています。

> 後編はこちら


鳥羽周作(とば・しゅうさく)さん
1978年、埼玉県生まれ。Jリーグの練習生、小学校の教員を経て料理の世界へ。有名店で修行を積み、2018年にオープンしたレストラン「sio」のオーナーシェフに。「sio」はミシュランガイド東京2020から3年連続一つ星店として掲載され、多くの人に愛される人気店に。現在は業態の異なる5つの飲食店を運営する会社のトップとして、また、他企業のコーポレートシェフやコラボ製品の開発、SNSを通じたレシピ企画など、レストランという枠組みを超えて「おいしい」を届けている。

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