ウェルビーイングの鍵はリノベーションにあった!

リノベーション(リフォームよりも大規模な建物改修)という言葉が日本で聞かれるようになって、20年以上に。
一部の趣味人のためのものという既成概念はくつがえされ、コロナ禍を経た今、自分らしい暮らしを求めてリノベーションに注目が集まり、中古物件の流通量も上昇傾向にあるといいます。
ウェルビーイングな暮らし、人生の幸福度を左右するリノベーションの意義とはいったい何でしょうか。
多角的なリノベーション事業を展開する株式会社リビタに話を伺いました。

お話を伺った人/株式会社リビタ 森本寛之さん、石川 唯さん
聞き手/ウェルビーイング勉強家:酒井博基、ウェルビーイング100 byオレンジページ編集長:前田洋子
撮影/原幹和
文/小林みどり


━━━『リビタ』では、ただ中古物件の再生にとどまらない、さまざまなリノベーション事業を手掛けているそうですね。

森本さん(以下:森本)
「私たちは一般的なリノベーション専門会社とは少し違いまして、暮らし方を探求する一環として、リノベーションをとらえています。
私が担当している個人のお客様向けサービス「リノサポ」のほかにも、リノベーション物件を自社で作って売ったり、シェアハウスやシェアスペース、ホテルの企画運営、最近ではオフィス関連の事業も新しく立ち上げました。
『リビタ』は住む・旅する・働く・学ぶなど、暮らしにまつわるいろんなコンテンツを作っている会社です。

住宅だけにこだわる必要はないし、賃貸とか居住形態だけの話しでもない。何か新しいヒントが出てくれば、そこを追求して掘り下げていく。そうやって、新しい暮らし方、新しい豊かさとは何かをずっと考え続け、次の不動産の常識を作り続ける会社でありたいと考えています」

株式会社リビタ R100 TOKYO事業部 リノベーションコンサルタント:森本寛之さん。「不動産」と「建築」。2つの職能・領域を横断しながら、お客様に最適な選択を提案。都心で希少な100㎡を超える邸宅マンションを紹介するサービス「R100 TOKYO」も担当。

━━━「リノサポ」とはどういったサービスでしょうか。

森本「中古物件を買ってリノベーションをしたいというお客様向けの、総合コンサルティングサービスです。具体的には、中古不動産の売買やリノベーションの設計施工のコンサルティング、資金計画の提案などをします。ただ、「リノサポ」では自社で設計施工はしません。

お客様が自分らしい暮らしを実現したいと思ったとき、いろいろ調べて気に入った建築家に頼みますよね。
でも、雑誌に出てくるようなかっこいい住宅を造る建築家にさえお願いすれば自分らしい暮らしが手に入るのかといったら、それだけでは足りません。

デザインという表層的なものだけじゃなく、その建築家とうまくコミュニケーションをとって、家づくりのプロセスをいかに楽しめるかということのほうが、実は非常に大切。
家づくりのプロセスが幸せな体験であれば、その家の満足度や愛着につながりますから。
そこをマッチングしていくのが、「リノサポ」の大きな役割です」

実例1/家族が一緒に過ごすLDKには、ワークスペースやカーテンで仕切れるフリースペースがあり、シンプルで機能的な収納などアイディア満載。

━━━『リビタ』が自社商品として企画した物件を見ると、非常にユニークなものが多いですね。たとえば、サウナが玄関土間にある家とか。

森本「ああ、あれは反響が大きかったですね(笑)。
弊社の分譲物件を販売する際に、ひとつの物件に対してたいだい10組くらいのお客様が見学にいらっしゃいますが、サウナの家のときは一気に30組くらい集まって。とはいえ、やっぱりすぐには売れなかったんですけどね(笑)

でも、それでいいと思っています。新しさや斬新さを伴うものは、必ず最初に抵抗感がくるものですから。たとえば、10年前は“玄関土間”という言葉に違和感があったはずですが、だんだんそれが定着して、今は新しい常識になってきている。それでいいんです」

━━━ほかに反響の大きかった物件はありますか?

森本「店舗併用住宅にはかなり注目が集まりました。
戸建てをリノベーションすること自体はこれまでにもありましたが、店舗併用住宅は、1階を店舗やギャラリー、ワークスペースなど仕事の場にし、2階を自己居住にした住宅です。

職住近接をリノベーションで実現した例ですね。
これには経済合理性もあって、自分の家が収益源にもなっているのです。

融資の問題とか建築的な問題とかいろいろあって、お客様のモチベーションがいくら高くても、ふつうのリノベーション会社では門前払いされる案件かもしれません。
でも私たちは、こういう難易度の高い案件が大好きで(笑)」

━━━職住近接というと、以前は職場の近くに住むことを指していたと思いますが、自宅と職場を融合させたということですね。『リビタ』ではコロナ禍にある2020年に、暮らしと住まいに関するアンケート調査を実施されたそうですが、生活者の価値観が変わってきているのでしょうか。

森本「ステイホームの期間が長くなったことによって、住まいや暮らしについて考える時間が増えたという方が74%にものぼりました。
特に、リモートワークのスペースや子どもの学習スペースをどうするか、各部屋の防音や室温管理といった機能面を追求する声などはだいぶ上がっていましたね。
もう何LDKという表現だけでは語りつくせないくらい、家の中に求める要素が増えてきています」

実例2/夫婦2人のリモートワークに対応できるスペースをつくり、「働く」と「住む」の両方を楽しめる家に。奥様のワークスペースは、キッチンから続くカウンターテーブルの一角に。

━━━実際に、住まいを通して自己理解を深めよう、住まいを再編集しようという動きは感じられますか?

森本「リノベーションはただ中古を再生するだけではなくて、自分の暮らしを編集することであり、リノベーションの本質・価値観は昔から変わっていません。
でもコロナ禍のステイホームを経験して、家の中での家族との距離感の取り方や、外出できないなら親しい友人を招きたいが家はどうあるべきか、といった視点ができ、自分だけではなく他者の幸せも考えるような機会が増えました。
だから今、リノベーションのもつ意味の大切さに、多くの人が気づき始めたように感じます」

PRコミュニケーションデザイン部:石川さん(以下:石川)
「『リビタ』では、リノベーションを2回されるお客様が多いですね。
1回目のリノベーションではデザイン的に“こんな家に住みたい”というハード面の要望が多かった方が、2回目では“こんな暮らしを実現したいから何かできませんか?”と、ソフト面からアプローチされます。
たとえば、先ほど森本が紹介したような店舗併用住宅であったり、戸建てで2階を民泊に利用できるようにしたり。
こういう特殊なケースを2回目のリノベーションでご希望されるケースも多いです」

株式会社リビタ PRコミュニケーションデザイン部 石川 唯さん。
リビタの想いや取り組みを伝え、より豊かな住まい・暮らしづくりを広めるPR/広報/マーケティング担当。一般社団法人リノベーション協議会の広報も兼務。

━━━規格された部屋に入居したのはいいけれど、なんだか使いづらい部屋があるなど、新築物件に微妙な違和感を持つ人が多いように思います。

森本「新築物件のレイアウトを見ると、だいたいテレビが中心にあって、リビングセットやダイニングセットがあって。画一的というのは、よく考えるととても違和感がありますよね。自分がそこにフィットするのか?という。
たとえば忙しく働く人がいて、帰ったらお風呂の時間だけが暮らしの楽しみなのかもしれない。そんな人にとって贅沢なダイニングルームよりも、浴室まわりが広いほうが心の豊かさにつながるだろうと。そういう調整はあるべきですよね。

一般的なマンション商品というのは、規模が大きかったり経済合理性を優先させたりで、どうしても最大公約数的な物件になりがちです。
でも「リノサポ」でお客様のお話しを直接伺うと、リビングよりバスルームを充実させたいというようなニーズは確かにあるんです。ただ市場にそういった物件がないから、皆さん気づかずに既存の間取りに自分の暮らしを合わせているだけで。

こういった暮らし方のヒントを「リノサポ」を通してたくさんいただけるのが、私たち『リビタ』の強みです。そのお客様個人の要望かもしれないけれど、実はいろんな人にあてはまるんじゃないの? ということが本当にたくさんあって。
そこで得た気づきを自社の商品として世の中に発信していきたい。リノベーション分譲事業をしながら、「リノサポ」という個人の顧客向けサービスも、事業の両軸の一方として大切にしている所以です」

石川「不動産業界はどうしても供給側が強くて、お客様が置いていかれている状況がずっと続いてはいたのですが、最近少しずつ変わってきているのかなと感じています。
これまでは、不動産会社の視点で作られたものの中から選択するしかないのが当たり前でした。
でもコロナ禍が後押ししてくれた部分もありますが、供給側が、お客様がどんな家に住みたいのか、どんな暮らしをしたいのかにちゃんと向き合うようになりました。

今まで生まれていないような顧客に寄り添った商品がどんどん増えていくといいなと思いながら、私たちは企画しています」

━━━住まいは人生の幸福に影響する大きなファクターですが、リノベーションと人生100年時代のウェルビーイングはどうつながると思われますか?

森本「自分の暮らし方と向き合い、他者の幸福を考えるきっかけとして、リノベーションは素晴らしいチャンスになり得ると思います。また、家を買う際の投資の采配を、自分のハンドリングの中でできる自由もあります。

将来的には、リノベーションしたほうが資産価値が上がるというところまで持っていきたいですね。
ヨーロッパでは100年、200年続いた住宅がキャラクターを持ち、そのキャラクターが資産価値のひとつとして評価されています。日本でも少しずつ、リノベーションにこだわった結果が高値売却につながるという事例も出始めています。

あとは、行政や金融機関などの制度や仕組みがバックアップしてくれれば、よりよいムーブメントになると思います。

幸せを追求したら高値で売れるなんて、最高にハッピーですよね(笑)」

【インフォメーション】

株式会社リビタ
「次の不動産の常識を作り続ける」をコンセプトに、リノベーションを通して未来の暮らしの豊かさを提案。満足のいくリノベーションを実現するためのコンサルティングサービス「リノサポ」をはじめ、戸建てやマンション一棟まるごとのリノベーション、シェア型賃貸住宅、リノベーションホテル、公共施設やコワーキングスペースなど多彩に展開。
https://www.rebita.co.jp/