食こそ人生最大の楽しみ! と語る人も多いほど、
ウェルビーイングを考えるうえで食は重要なファクターになる。
それなのに、味気ない減塩食をこれから一生続けなければいけないとしたら…。
健康寿命を延ばすためとはいえ、これでは人生の楽しみも半減しそう。
そんな悩める人々に、希望の彗星のごとく現れたのが【エレキソルト スプーン】。
微弱な電流を流したそのスプーンで食べれば、
薄味の料理もおいしくいただけるというのだから期待は高まる。
画期的な【エレキソルト スプーン】を開発したキリンの佐藤さんに、
その仕組みや、6月に開催された試食会で実際に使ってみた人々の声を聞いた。
お話しをうかがった人/キリンホールディングス株式会社 エレキソルト開発者:佐藤 愛
聞き手/ウェルビーイング勉強家:酒井博基、ウェルビーイング100 byオレンジページ編集長:前田洋子
撮影/大崎あゆみ
文/小林みどり

━━━減塩食と言えば、塩分の量を減らして、味気なくともひたすらがまん、というイメージですが、まったく違う視点で減塩食をサポートする【エレキソルト スプーン】は、画期的なツールだと思います。開発したきっかけは何だったのでしょうか。
「WHOが推奨する食塩摂取量は1日5g未満(※1)なのですが、20歳以上の日本人が1日当たりに摂取する食塩量は10.1gと、その倍以上になります(※2)。塩分の過剰摂取を続けると、高血圧や腎疾患といった健康トラブルの引き金になることは、皆さんよくご存じだと思います。
日本では30~40代で高血圧の人が大幅に増え、70歳以上では7割近くも(※3)。だから減塩が叫ばれているわけですが、とはいえ、たとえば大好きなラーメンを今日から控えなさいと言われても、なかなか難しいですよね。
WHOの推奨量を基準にしたら、私たち日本人は塩分量を半減させなければいけません。でも、食事内容をいきなり大きく変えると食の満足度が下がってしまいます。大学病院の先生からも減塩食を続けられない患者さんが多いと伺っていましたし、私も1日6g未満という減塩食を3か月試してみましたが、続けるうちに食欲が落ちて、食事が楽しくないという経験をしました。私たちが行ったアンケート調査(※4)でも、塩分を控えた食事をしている人の約63%が何らかの不満を抱え、そのうちの約8割は味の物足りなさが不満だと答えています。
この、味への不満をなんとか解決できないかと考えて開発したのが、【エレキソルト】です。減塩に取り組む方々の食生活のサポートツールとして2024年5月に、多くの人が使いやすいスプーン型の【エレキソルト スプーン】を発売しました」
※1 2012年WHOガイドライン
※2 厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査
※3 厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査
※4 キリン調べ 調査時期:2021年6月 対象:首都圏在住40~79歳男女(N=4,411) 形式:webアンケート調査 塩分を控えた食事を行っている/行う意思のある方は全体の約47%
━━━【エレキソルト スプーン】を使って食べると、薄味の料理でもおいしく感じると聞きました。どういう仕組みなのでしょうか。
「電気味覚という、食事の味わいを電気の力で変調させる技術をお持ちの明治大学とタッグを組んで、薄味の食事の味わいを増強する技術開発を行ってきました。
食事の中の塩味やうま味、酸味といった成分の多くは、電気的な性質を持つイオンと呼ばれる状態になっています。それらの成分が唾液の中で分散し、舌の味細胞に当たったものだけを、私たちは味として感じ取っているんですね。
この電気的な性質を持った成分に微弱な電流を流してあげることで、塩味やうま味の成分が舌に押し寄せるようにコントロールするわけです。それによって、体感には個人差がありますが薄味でもしっかりした味を感じるようになります」
━━━電気の力を借りることで、少しの塩味やうま味でも強く感じることができる。つまり、減塩食をおいしく感じるようになるのですね。【エレキソルト スプーン】の使い方に何かコツはあるのでしょうか。
「特に難しいことはないのですが、より効果的にお使いいただくためには4つのコツがあります。
1つ目は、持ち手の裏側にある電極パネルにしっかり手が触れるように持つこと。
2つ目は、スプーンのくぼみにある金属に触れるように料理を載せること。
3つ目は、電流がちゃんと流れていると持ち手のランプが白く光りますので、それを確認すること。
そして最後の4つ目は、口からゆっくりとスプーンを離すことです。さっとスプーンを口から離してしまいますと、そこで電流が途切れて効果終了となり、あまり塩味やうま味を感じられないままお食事が終わってしまいます。
【エレキソルト スプーン】は味を劇的に変えたりゼロから作り上げるものではなく、味わいがじわっと増強するのが特徴です。味の感じ方や増強の度合いは個人差がありますし、食べる料理の内容によっても変わります。持ち手のスイッチを押すことで電流の強度を4段階まで選択できますので、ご自身に合う強度に調整してみてください」

━━━このツールがあれば減塩食も辛くなくなるかもしれないと思えば、【エレキソルト スプーン】に期待する人は多そうですね。それにしても、キリンと言えばビールや飲料のメーカーという印象ですが。
「そうですね。確かにビールや清涼飲料が主な事業ではありますが、実は医薬品事業も持っていて、そこをつなぐ領域として、ヘルスサイエンスに力を入れています。【エレキソルト】は、食塩の過剰摂取という社会課題を解決するために生まれた、ヘルスサイエンスの新規事業のひとつになります。
私たちは飲料や医薬品を通して、ご家族や友人との楽しい食卓、おいしい食事のある人生に寄り添ってきました。そんな中で【エレキソルト】は、「おいしい食事のある人生を、すべての人に」をコンセプトに、食を通じた健幸の実現をサポートする機械として、事業を展開していこうと考えています」
━━━【エレキソルト スプーン】を使った食のイベントを開催されたと聞きました。どんなイベントだったのでしょうか。
「2024年の6月と8月に、『エレキソルトでおいしく減塩レシピ体験会』を開催しました。減塩食に関心のある30名ほどの参加者に向けて、【エレキソルト スプーン】の仕組みや使い方を紹介し、料理研究家の藤井恵先生による減塩レシピ料理デモを行い、そのお料理を実際に【エレキソルト スプーン】で試食していただくという内容になります。
オンラインで視聴された参加者もたくさんいらして、減塩をネガティブにとらえるのではなく、より楽しく、よりおいしくと考える方がいかに多いかが実感できました」



━━━体験会に参加した皆さんの様子はいかがでしたか。
「皆さん熱心にメモを取っていらして、試食の際にも、こんな使い方があるんじゃないか、こう食べるともっとおいしく感じるなどお互いに声をかけ合ってらっしゃいましたね。減塩食について学びたい、チャレンジしたい、楽しみたいという気持ちをあらためて認識されたようです。
いくつかお客さまの声をご紹介しますと、『エレキソルト スプーンを使うと口の中のうま味の広がりがすごかった。これなら積極的に減塩に取り組みやすい』、『子どもの食事は塩分を控えたいが夫はお酒に合う濃い味付けを希望。エレキソルト スプーンを活用しながら、大人が少しずつ減塩の食事に慣れていきたい』、『高齢になってから食生活を変えるのは大変。エレキソルト スプーンが病院などでも使えるようになるといい』といったご意見(※5)が印象的でした」
※5 お客様からいただいたコメントの中から、一部抜粋して掲載しています。体感には個人差があります。また、料理によっても感じ方が異なる場合があります。

━━━佐藤さんご自身は、このイベントを通じてどんなことを感じましたか?
「参加者の皆さんが活発に意見交換をしていて、ご自身の気づきをほかの人にも共有したい、ほかの人にも幸せになってほしいという思いを強く感じました。また、健康上の理由から、かなり厳しい減塩をせざるを得ない方のご家族のお話など、リアルな声はやはりズシンと胸に響きました。もっと研究を重ねて皆さんの食べるよろこびをつなぎたいと心から感じました。
私たちが目指しているのは、よりおいしい、より楽しい食生活を作り上げていくこと。これはキリンだけでできることではありません。お客様やほかの企業と一緒に、意見を交換したり情報を共有したりすることで、製品やサービスのさらなるブラッシュアップにつながると感じています。
また一方で、『キリンで【エレキソルト】を開発していると初めて知った』、『キリンがなぜ健康のことをやっているのか』、などのお声もいただきました。あらためて私たちキリンが、ヘルスサイエンス、健康の分野に力を入れていることを広く、多くの方にお伝えしていかなければいけないな、と実感しています。」