「自分らしく、健やかに働き続けるにはどうしたらよいですか?」(ゲスト:村山昇さん/キャリア・ポートレート コンサルティング 代表)

これまでになかった視点や気づきのヒントを学ぶ『ウェルビーイング100大学 公開インタビュー』。第26回目のゲストは組織・人事コンサルタントの村山昇さんです。村山さんのご著書『キャリア・ウェルネス』のサブタイトルは「『成功者を目指す』から、『健やかに働き続ける』への転換」。人生100年時代に、働くこととどう向き合っていけばいいのか。この疑問に明確な答えを示してくださった、貴重なインタビューとなりました。

聞き手/ウェルビーイング勉強家:酒井博基、ウェルビーイング100byオレンジページ編集長:前田洋子
撮影/原幹和
文/中川和子


村山昇 (むらやま・のぼる)さん
キャリア・ポートレートコンサルティング代表。組織・人事コンサルタント。1986年慶應義塾大学・経済学部卒業。プラス、日経BP社、ベネッセコーポレーション、NTTデータを経て、2003年独立。1994〜95年、イリノイ工科大学大学院「Institute of Design」(米・シカゴ)研究員、2007年一橋大学大学院・商学研究科にて経営学修士(MBA)取得。独立後は企業の従業員・公務員を対象に、「プロフェッショナルシップ」(一個のプロとしての基盤意識)醸成研修はじめ、「コンセプチュアル思考」研修、管理職研修、キャリア教育のプログラムを開発・実施している。著書に、『働き方の哲学』『コンセプチュアル思考』『スキルペディア』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『キレの思考・コクの思考』(東洋経済新報社)、『キャリア・ウェルネス』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
ビジネスホームページは、http://www.careerportrait.biz


対極にある「成功キャリア観」と「自己防衛のキャリア観」

酒井:本日は私たちのインタビューの前に、村山先生がキャリアとウェルビーイングをどのように関連づけていらっしゃるのかを、ご説明いただきます。これまでゆるくやってきたので、スライドを使っていただくのは初めての試みです(笑)。では早速、お願いいたします。

村山:はい、よろしくお願いします。今日は「キャリアという概念」と、「ウェルビーイングという概念」がどう結びつくのかというようなお話をしたいと思います。私はこれまで「キャリア開発研修」とか「キャリアデザイン研修」という名称で行われてきた研修を、あえて「キャリアウェルネス研修」と名付けています。平たく言えば「健やかさのキャリアをどのように実現するのか」ということです。
まず、キャリア観の変化をお話しさせていただきます。昭和の時代、会社員は一生懸命働いて、日本を先進国の仲間入りさせたのですが、当時は右肩上がり経済が当然でしたし、会社への忠誠心を持って、ややもすると私生活を犠牲にすることもありました。それはハードワークですが、どちらかと言うと会社から指示された受動的なハードワークでした。でも、それに見合う給与もあったし、終身雇用という守られた立場もありました。そういったところから生まれたキャリア観をXとすると、右肩上がりでなければダメだ、成功者にならなきゃいけない、落伍者の烙印を押されたくないという、成功者をめざすキャリア観が支配的だったと思います。

昭和の時代が終わって、平成、令和になると、振り子のように、その対極の流れが起こります。平成、令和の時代は、もう右肩上がりは当然ではない経済になりました。仕事と私生活のバランスを取らないといけないということになり、受動的ハードワークへの疑問も生まれました。同時に、仮に65歳まで会社員として勤めたとしても、65歳から100歳まで生きてしまうとすると、そこからまだ35年も人生は残っている。では、その35年はどうするんだろうと、不安が増してきた。特にZ世代といわれる若い人たちが、昭和のキャリア観Xに非常に疑問を持って、反対側への振り子が振れて、キャリア観Y、「仕事は食べるための労役で、競争で消耗を強いられるのはイヤ」だと。心身共に自分を守りたいので、せめてプライベートではラクをしたい。こういうキャリア観が出てきたんですね。昭和の時代の成功のキャリア観はしらけた目線で見て、自己防衛に走る。結局、この両極のどちらかで、妥協をはかることが、現在の多くの会社員の人たちのマインドじゃないかと思うんです。それで、この「成功か自己防衛か」というところの妥協点ではなく、第3のキャリア観が生まれてきているわけなんですが、これが今日のメインテーマである「健やかさ」を求めていくキャリア観です。

キャリアマラソンを完走するためには、第3のキャリア観が重要に

村山:働くことはしんどいことなんですけれども、自分の能力を開発してくれたり、あるいは自分の存在意義だったり、生きていく証を残すための必要な活動でもあるし、働きがいをもって働けば、働くことは大いに肯定的なものでもあるんですね。ですから、働くことを通じてウェルビーイング、良好で健やかな状態になっていくということも大いにあるのではないかということですね。
成功のキャリアや自己防衛のキャリアは、「処し方」の次元なんです。どう世の中を処していくか、どう仕事を処していくかという、ハウツーと言いますか。どうやってうまく処理していって、生き延びることができるかという処し方の次元が主だったんですけれど、健やかさのキャリアは、「在り方」の次元、自分自身がどうありたいかということで、ちょっと次元が変わっているんじゃないかと思います。
成功のキャリア観と自己防衛のキャリア観、どちらも不健全な状態、この両極ではなく、健やかさのキャリア観という第3のキャリア観が生まれてきて、これが今後の大きな潮流になってくれればいいなと私も思っています。
健やかなキャリア観では、自分のリズムを持とうとする。だから、このキャリアは中長期の時間軸のものなんです。

一般的には22歳前後で会社に就職し、それから生産年齢の終わりが64歳と言われていますよね。実にこれ、40年間あるんです。40年間現役で働くという、長いキャリアマラソンなわけで。64歳で一応、定年退職してから第2のマラソンを始める人もいれば、余暇生活を始める人もいます。いずれにしても100歳まで生きてしまう時代ですから、64歳以降の35年がすごく長いということです。この35年、余暇生活だけで過ごせる人は実は世の中に少ないんじゃないかと思うんです。余暇生活は消費生活ですから、経済力の不安もあるから、やはり第2のマラソンを走らざるをえなくなる。では、第2のマラソンも「働かせられ感」でいけるのか? ということになりますが、働くことを肯定的に捉えて、自分の能力を磨き、社会とつながり、自分の存在価値を味わい満たしていくという、能動的な捉え方でない限り、第2マラソンも健やかに働き続けられないと思います、大事なのは、「働くことをどう意識するか」ということ。ちなみに、第1マラソンの折り返し点がおおよそ43歳になります。この折り返し地点までには、いろいろな障害が出てきます。体力も低下してきます。いろいろなことでモチベーションも低下してきます。AIや高機能マシンによって自分の職が奪われるのではないか、人間関係、会社員疲れ、アイデンティティの喪失だとか漂流感などが出てきて、キャリアマラソンを走り切れずに、途中でリタイアしてしまうというような人たちも増えています。ですから、「健やかに働く」ということは非常に重要なテーマになります。

健やかなキャリアには「意味」が不可欠

村山:では、健やかな仕事、健やかなキャリアはどういったことが要件として必要になるかということで、私は3つあげているんです。「負荷とともにある」と「動きの中にある」「意味のもとにある」の3つ。

まず「負荷」ですが、強さは負荷によって作られる。重力のない環境で過ごす宇宙飛行士は、宇宙船内で適度に運動をしていないと筋力が衰えて、地球に帰ってきた時に、自分で歩けないぐらいに体力低下、筋力低下します。負荷は常に与えていないと肉体は衰える。それは精神も同じです。何もない状態のところでは、精神は健やかに鍛えられませんから、まず、負荷が大事だということです。
それから、2つ目の動くことで安定が生じる。動かないでじっとしていると安定かというと、そうではなくて、動くことでむしろ強い安定が生じると思います。たとえば、自転車でスピードを出さないで乗ってみろと言われると、なかなか難しい。駒も一緒で、スピードが0だとすぐに倒れてしまう。つまり、静的安定より動的安定のほうがしっかりしている。働くのはしんどいですけれど、働かずに無職でじっとしていれば健やかかというと、そうではないですよね、何かの目標に向かって働いている状態のほうが、実は安定的なんです。
昭和のスーパーサラリーマンだって、負荷をくぐり動き回っていたという見方もできますが、あれは悪い例です。結果的に燃え尽きたり、体を壊したりしてしまった。では、そういった負荷に耐えたり、動きのエネルギーをどこから湧かすかというと、「意味」なんですね。意味というのは「心の味わい」と書きます。

働くうえでは誰しも目標を抱えていますが、この目標に向かってやる気を起こして働くときに、目標を達成すれば金銭的報酬だとか賞罰がありますね。これは外発的な動機なんですね。外のものに影響され、支配されるので、もろい動機です。それとは逆に、意味的報酬。これは内発的動機です。自分の内側からふつふつと湧いてくる動機になります。この目標に挑戦することで自分が成長できるとか、いろいろな人と出会えるとか、世の中に貢献できるとか。こういったものが自分の内側から湧いてくる時、負荷に耐えることもできるし、動き回ることもできる。この3つが揃うと、初めて健やかな仕事が生まれてくるということです。

“楽しい”の中の「快」と「泰」

村山:こういった一連の流れで、健やかさを理解する上で重要なのが「快」と「泰」だと考えています。キーワードは「楽しい」なのですが、楽しいには性質の幅があると思えるんです。たとえば海外旅行で豪華ディナーを食べていると、楽で楽しいですね。気分の快さがあります。一方で意的な楽しいもあります。たとえば、発展途上国で医療従事する医師の場合、、発展途上国ですから生活インフラも整っていないでしょうから生活は大変です。楽ではないけれど、深いところで楽しい。なぜか。「魂の充実」があるからですね。同じ楽しいでも質的に差があるということです。最初の海外で豪華ディナーは「情的」な楽しい、「快」なんです。刺激的で高揚感があり、負荷がなく楽。でも、持続性が弱い。これは生きる上での華やぎですから、非常に大事なものでもあります。一方の「意的」な楽しいは漢字でいうと「泰」なんです。泰というのは安らかでどっしりしているということです。泰の状態にある人は活力があって、自信に満ちていて、誇りとか使命感によって自分の中がどっしりと穏やかになっているということですね。こちらは負荷があって必ずしも楽じゃないんです。しかし、持続性があって安定的です。こういった「泰」を得る活動は意志的な張り、魂の充実がありますね。「快」と「泰」、どちらがいいとか悪いとかいう議論ではなく、どちらも人生には必要です。人間というのは情的な楽しさをベースに生き続けたいと願ってしまいがちなのですが、人生100年をすべて「快・情的な楽しさ」で埋めようとしても無理です。40歳、50歳、60歳と年を重ねるにしたがって、意的な楽しさシフトしていくことがキーワードかなと思います。

「目標」と「目的」の違いは?

村山:よく企業研修で行うのが、「目標と目的の違い」です。目標は成すべき数量、状態、目指すべき印のようなもの。仕事には目標がついてまわり、働く人は何かしら目標を立てて働いていますね。で、目標に「どうしてそれをやるのか」という意味が加わって、初めて目的になるということです。
ヨーロッパの古くからの寓話に3人のレンガ積みというのがあります。中世ヨーロッパの街の建築現場で、3人の男が黙々と同じようにレンガを積んでいる。そこで何をしているのかと聞いたら、1番目の男は「レンガを積んでいます」と答えた。2番目の男は「金を稼いでます」と言った。3番目の男は「街の大聖堂を造っています」と言うんです。3人ともレンガを積むという外見は同じ作業をしているんだけれども、その作業に対する意識が違うということですね。目標は3人とも共通ですね。1日に何個レンガを積むとか、何月何日までに完成させないといけないとか。ところが、意味づけが違う。1人目は特に意味がなく、2人目は食べるため。3人目は後世に残る建設事業に加わるためですね。目的というのは意味を含んだものですから、3人でこれだけ違う。
大事なのは、この目標というのは他者、外部から一律に与えられるが、意味は他者からは与えらず、自分で見出すものということ。会社でも一律に目標が与えられますが、それがつらいと思う人もいれば、その目標、数値に何かしら意味づけをして、この目標、数値に達成することは世の中にこう通じる、あるいは自分の成長に通じるというように、意味づけできた人は、目標を達成するやる気が内側から湧いてきます。会社で同じ数値目標を与えられても、それをつらいと思う人とやりがいを持って乗り越えられる人の2つに分かれる。それは何の違いかというと、やはり「意味づけする力の違い」だと思います。
誰しも生活がありますから、お金のために働くことは必要なことです。私は「ライスワーク」という言葉を、食べるための仕事という意味で紹介しています。65歳まで働いて、それ以降のキャリアの第2マラソンも働いて、生活地盤の地面だけ作ったということだけでは、少し残念なキャリアに終わってしまうのではいでしょうか。自分の土地の上にどういう建物を残していくかで、その残した建物で世の中の人にどう喜んでいただけるかと考えて、働く目的を描き、創造していくということですね。そうした時の仕事はライフワークであり、ソウルワークになる。ソウルワークというのは、魂の叫びとして成し遂げたい仕事ということです。ライスワークだけで一生涯終わらずに、ライフワーク、ソウルワークを見つけた人はやっぱり幸せだし、その分、健やかに、嬉々として「内発の力」で働いていくことができるのではないでしょうか。

私たちは、人生で4つの生活を生きると言われてます。仕事生活、家庭生活、個人生活、社会生活。生産年齢にいる間は、仕事生活が肥大化してますが、定年以降の人生では、仕事生活は主たる人生のエンジンではなくなっているはずです。会社の肩書きもなくなります。家庭生活も子どもの独立があったり、配偶者との別離などもあって、孤独リスクもどんどん高まってきます。それから、個人生活も、趣味、娯楽という消費生活だけはいつまでも続けられません。そうすると、社会生活が非常に大きな意味を持ちます。1個の人間として、社会貢献活動、使命的活動、ライフワーク、ソウルワークといったような意味を満たす仕事ですね。これが、自分を助け、生かすことになるんじゃないかと思っているんです。

酒井:ありがとうございました。お話をうかがって、働く、ということについての新しい潮流など、腹落ちできるところばかりでした。前田さん、どうですか?

前田:「キャリアで成功するぞ」という昭和の働き方は「処し方」で、健やかな働き方は「在り方」だということがたいへん印象に残りました。これからの人は「私はどう在るべきか」を考えることができるんだったら、もう1回、若くなりたいなと(笑)。

村山:いや、今からでも遅くないです。処し方と在り方なんですけれど、処し方ってhow to doなんですね。日本人の民族性として手先が器用なので、ものを丁寧に細かく作れる。それで日本の工業製品は成功したのですが。手先が細やかでモノを操作するのがうまいものだから、どうしても処し方に長けて、そこで満足してしまう。一部には、技を道として究めていく哲学的な職人もいますが、普通は在り方までの次元になかなか登れないんです。処し方で満足してしまう人と、そこから「自分のもの作りはどうあるべきなんだろう」みたいなことを哲学的に突きつめていける人と、ここはやっぱり、差が出てきます。

前田:お話の中の「意味づける力」って、どうやったらつけられるのだろうかと。すぐノウハウを聞きたがってしまってお恥ずかしいですが……。

村山:いや、それはすごく重要な質問です。意味付けをしやすい人というのは、深い、ネガティブな負の経験がある人ですね。自分の体験で、落ち込んだり、苦境に立ったり、修羅場をくぐるっている時に、何かしら自分のやっていることに、意味づけをしなければ、そのエネルギーが湧いてこなかったはずですから。
苦労ができた人は、そこから学ぶことができるんが、ネガティブな状況にならずに過ごしてきた人は、どうすればいいのか。それには、私は読書がとても大事だと思います。特に、偉人伝を読むことをお勧めします。たとえば、野口英世がどういう人物だったのかというのをこの歳で読むと、どこで苦労して、どんなことを思って、なぜ、自分の命を犠牲にしてまで仕事に没頭できたのかが、ちゃんと読み取れるんですね。
あとは、身近な人を参考にする。たとえば、SNSとかで、何かのイベントの主催者とコンタクトを取って、どうしてこの会を開きたいと思ったのか聞いてみたり。人がどんな動機でどのように動いていくのかの例を知れば、自分のモチベーションもはっきりしてきます。自分なりの工夫をしたり、コトを起こしている人に聞けばいいんですね。

以下、村山さんがみなさんの質問にお答えします。

Q:働くことを通じてウェルビーイングな状態になることが理想ではありますが、そうは言っても、目の前の仕事にアップアップな場合、心がすさんでしまいそうな時があります。どいうふうに心を保つ習慣をつけるとよいでしょうか?

村山:仕事環境が過酷だと、いくら働くことを通じてウェルビーイングにといっても、それはもうお題目になってしまいます。一従業員として、仕事量とか仕事環境だとか、今の組織風土をどうにかして欲しいと、上司と話し合うところから始めないといけないかもしれません。就労環境がある程度整っていないと、働くことを通じてのウェルビーイングはなかなか考えにくいですから。

酒井:そういうことを上司に持ち込んで、職場の空気が悪くなるとか、環境が悪化したらどうしようとか考えていらっしゃるのかもしれません。そういう時はどうすればいいんでしょう? 誰かに相談したり、仲間を見つけるとか。

村山:私からのアドバイスとしては、「エンプロイアビリティ=雇われる能力」を高めるということです。これは、自分の能力や働く意志を磨いて、どこの企業からでも雇われうる実力をつけるというようなことなんです。自分を守る方策として、エンプロイアビリティを高める。職場環境の改革だとか、目標数値をもう少し妥当なものにして欲しいと言っても聞き入れられず「四の五の言わないでやれ!」というような会社であれば、そこを去ることも選択肢として考えないといけないですね。その時に、エンプロイアビリティを高められていたら、もっと環境がいいところに転職することを考えていただきたいです。万が一、やっぱりそこまではできなくて、今の会社にとどまるしかないという選択肢なら、そこはある程度、割り切るしかないです。割り切って、仕事以外の副業的なところで、自分の思っていることを小さく試してみるとか、自分の選択肢を広げて、他の可能性はないのかということを試してはどうでしょうか。

Q:これから就職活動を考える学生に、就職先選びのアドバイスをお願いします。

村山:大卒の場合、22歳から64歳まで40年超のマラソンと言いましたけれど、その最初の3年間はすごく大事なんです。若い世代は「ワークライフバランスがとれて、プライベートも大事にしたい」と思うかもしれませんが、最初の3年間は仕事の中身や人間関係がすごく大事になりますから、最初から休日が多いとか、福利厚生が整っている会社だからとか、そういうことを基準にして選ばないほうがいいと思います。仮に残業は多かったとしても、濃い仕事の内容を任されたり、仕事を通じ部下の成長を促してくれる上司がいたり。多少は仕事の負荷が大きそうな会社であっても、何かしっかりとした事業観や就労観を語るような会社であれば、それは自分にとってよい影響を与えてくれる会社ではないでしょうか。要は、会社の規模や制度がどうということだけではなく、その会社は働くことを通じて、1人1人の社員にどうなってもらいたいのかというようなことを発信しているかどうかに目線を入れてください。もし発信しているなら、その会社は「健やかなキャリア」を育む土壌を持つ可能性があると思います。

Q:50代です。なかなか今の会社で新しいことを担当できないので、個人事業主で何かやっていくしかないのかなと思っています。身近に相談できる場所はありますか?

村山:これは人とつながることでいろいろなヒントが得られるような気がします。SNSで個人事業主の人にコンタクトを取って「どういう動機で、起ち上がりはどんな感じですか?」というようなことを、先行してやっている人たちに聞いて、ヒントをもらうのがいちばん。相談窓口として、たとえばハローワークとかに行っても、たぶんつかめないでしょう。自営業を始めた人の情報がいちばんためになるので、そういった人を探して「ホームページを拝見しました。「私も独立しようと思っているのですが、ちょっとお話を聴かせてくださいませんか」とストレートに投げかければ、答えてくれる人はけっこういると思います。