ウェルビーイングの鍵は美しい景観にあった

自粛要請がなかったこの夏、国内旅行が勢いを取り戻した。
久しぶりに見た里山や海岸の風景に、心が癒された人も多いのではないだろうか。
美しく整えられた棚田や、自然の中に佇む歴史ある建造物、活気あふれる漁村の朝市。
人の営みがあるからこその美しい風景が、もしも廃れていくとしたら?
そこに住む人に幸福はあるのか。その風景が見られなくなる日本に幸福はあるのか。
美の観点から小さな行政区の活動をサポートする、
NPO法人「日本で最も美しい村」連合が考えるウェルビーイングとは。

お話しをうかがった人/NPO法人「日本で最も美しい村」連合 理事・副会長 二宮かおるさん(写真右)、事務局 浅田陽子さん(写真左)
聞き手/ウェルビーイング勉強家:酒井博基、ウェルビーイング100 byオレンジページ編集長:前田洋子
撮影/原 幹和
文/小林みどり


━━━「日本で最も美しい村」連合(以下、美しい村連合、または連合)と聞くと、知らない人には村おこしのような印象があるかもしれませんが、実はそうではないと聞いています。どういった活動をする団体なのでしょうか。

二宮さん(以下、二宮)「団体のウェブサイトから引用すると、“「日本で最も美しい村」連合は、素晴らしい地域資源を持つ美しい町や村や地区が、「日本で最も美しい村」を宣言することで自らの地域に誇りを持ち、将来にわたって美しい地域づくりを行い、地域の活性化と自立を住民自らの手で推進することを支援します。なかでも、生活の営みにより形成されてきた景観・環境や地域の伝統文化を守り、これらを活用することで観光的付加価値を高め、地域の資源の保護と地域経済の発展に寄与することを目的としています。”

・・・・長いですね。主旨や活動内容をひと言では言えないのがつらいところです。まずは、この連合が立ち上がった背景をお話しすると分かりやすいかもしれません。

私の叔父である前副会長の松尾雅彦はもともとカルビーの三代目社長でした。カルビーはポテトチップスの原材料であるじゃがいもの7割を北海道で調達しています。パッチワークの丘で有名な北海道美瑛町にも契約農家さんがいらっしゃるので、その方の畑にカルビーのお取引先をお連れするわけです。こんなに美しい景観の中でとれるじゃがいもでポテトチップスを作っているんですよと。

ところが何年か通ううちに、看板が建つなどして景観が損なわれる事象が目につくようになりました。畑は私有地ですので致し方ないのですが、松尾はこのままではいずれ美しい景観が失われると考えました。
そこで、以前フランスで知った「フランスの最も美しい村協会」をお手本に景観を守る活動を始めてはどうかと、当時の美瑛町長である浜田哲さんに提案しました。浜田さんはフットワークのよい方で、早速フランスに視察に行き活動を学び、深い共感を得たので日本でも同様の活動を始めることになりました」

━━━なるほど、美しい景観を守るために始まった活動なのですね。

二宮「浜田さんが各地の町村に声をかけ、松尾雅彦はこの活動に共感してくれる支援スポンサーを募り、2005年に7つの町村からスタートしました。

平成11年(1999年)ころから多くの町村合併がすすんでいましたが、連合設立時の平成17年(2005年)に加盟した7つの町村は、あえて町村合併をしない自主自立の道を選んだ町村でした。そこの首長および住民、議会はユニークな町営、村営をなさっています。町村は加盟時に自ら「日本で最も美しい村」を宣言します。「自立した美しい街づくりをすることを決意して、その実現のために具体的なアクションをする」ことを表明するのです。景観の美しいところには美しい心の人が住んでいて、経済的自立もしているという、他の手本となる街づくりです。

そのようなわけで、望めば誰でも加盟できるというわけではありません。フランスの連合と同様に、加盟には厳しい基準を設けています。
(1)地域独特の景観や営みといった魅力的な地域資源が2つ以上ある(2)それを維持するための計画、経済的な自立をしていくための計画がある これらを条件にさまざまな項目で加盟審査をしています。景観条例や歴史的建造物を守るルールがあるか、経済を維持して人口を増やすプランがあるか等の審査項目に合格した61の町村地域が、現在加盟してくれています。

加盟セレモニーで町村地域の長は「〇〇村は、日本で最も美しい村を宣言する。」という決意表明をします。ここに至るまでには町村議会の承認も得ています。役場や首長だけで決めたことではなく、美しい村活動が住民の総意であるという確認の場にもなります。

連合で言う「景観」というのは、いわゆる山があって滝があってというのではなく、そこで営まれている人の生活によってつくられた独自の風景のことを言います。その価値を高めて次世代に継承していくことが目的です。その具体的な手段やアプローチについては、各町村内地域で話し合い、プランを立てて具体化していくわけです。

連合設立のきっかけを作ったのは浜田哲さんと松尾ですが、この活動は町村だけではできないし、支援企業だけでもできません。大事なのは、今美しい我々の町村を未来にも存続させていくと首長自らが宣言し、住民を巻き込んで計画を立て、5年ごとに再審査を受けて進捗を確認しながらやっていくというのが、私たち連合の運営であり価値の創造です」

━━━美しい景観を残すための町村の自律的な行動を促す、社会活動のようなものだと。

二宮「はい。そこに住んでいる方にとってみれば見慣れた風景なので、そこに価値があると気づいていない場合もあります。たとえば美瑛町の美しいパッチワークの丘も、写真家の前田真三さんが日本中に発信するまで知る人はわずかだったのです。
しかし、美しい村を宣言することは、自分たちの住んでいるところを再確認する機会になります。当たり前だと思っていた日々の暮らしが非常に価値のあるものであり、失ったら取り戻すことのできない、かけがいのないものだということを、教え合い、気づき合うというのが連合の役割だと思っています。

地域資源がどんなものなのか、それをどうやって維持するのか。伝統的なお祭りが守られているか、伝統的な建造物があってそれが守られているか。そのために具体的にどんなことをしているのか。
こういった審査項目はフランスの連合をお手本にしていますが、彼らの基準は非常に厳しいです。守るべきエリアを特定したら、そこに現代的なデザインの建造物は立てない。住宅の修理も昔ながらの材料を使ってもとどおりにする。などの決まりがあります。

日本の加盟町村にそこまで求めるのはなかなか難しいです。商売のために看板を出しているのは納税をしている住民です。経済活動なくしては町村の存続はありません。美しい村連合の趣旨を理解いただき、同意を得ながら進めるしかありません。

美しいものはより美しく磨いていこう、汚いものは排除していこうということを、連合への加盟を機に前進させることができる。それが連合の存在意義かなと思います」

━━━いわゆる観光資源として景観を守るのとは違うのでしょうか。

二宮「観光客等、交流人口を増やすというのは、どこの町村も取り組んでいることです。これは一般的な話ですが、昭和の高度経済成長期には、社員旅行等で多くの人が温泉のある観光地などを訪れていました。しかし、今では訪れる人が少なくなってしまった観光地も多くあります。それらをふたたび魅力的な場所にしていく試みが、加盟町村では活発に行われています。たとえば、山形県大蔵村の肘折温泉は、開湯1200年の歴史があります。若いアーティストの協力を得て制作した美しい灯篭を温泉街にともすイベント「ひじおりの灯」は多くの観光客を集めています。

また熊本県の南小国町の黒川温泉で「入湯手形」を購入すると、複数の宿のお風呂を利用できます。温泉街全体の景観を統一して看板などもシンプルにし、植栽の手入れもゆきとどいています。このように、自然景観を守るだけでなく人の知恵で主要な産業を継続させていく努力がどこの町村でもめざましいです。またお互いの町村を訪問し学びあうこともさかんに行われています。コロナ前には海外視察の機会もありました。

これらの活動は連合の事務局がお金を出しているわけではなく、それぞれの自治体の予算や国から得た補助金、事業を運営する組織の資金等でおこなわれます。私たち事務局の運営費用は、それらの発信やブランド作りなどに使われています」

━━━同じ意識を持った自治体をつなげることが、事務局の役割なんですね。

二宮「そうです。連合はあくまでも連合であって、事務局は連合というまとまりについて発信する立場です。会費を集める、総会を開く、広報物を作るといった役割を担っています。

それぞれの町村が抱える問題は違いますので、事務局が主導して統一して何かをやろう、今年はこの活動をしようというのはなかなか決めづらい。自然保護団体や弱者救済を目的とする団体とは違い、61加盟町村地域の連携をとるための運営をするのが事務局になります。NPO法人としては非常にユニークな形だと思います。

町村においては、町の入り口に連合のロゴ入り看板を掲げていただいたり、旅館や店舗にポスターを掲げていただいたりして連合の知名度アップにご協力いただいています。まだまだ認知度は限定的ではありますが、一方で、ようやく時代が我々の団体の趣旨に近づいてきたかなという実感はあります。

私たちの設立は2005年ですが、2014年に地域創生という言葉を当時の安倍政権が発信して、地方創生推進交付金という新しい仕組みが設けられました。一般の地方交付税は高齢者の割合などでデジタルに決められていますが、地方創生推進交付金は「まち・ひと・しごと創生総合戦略」というプランを立ててKPI(重要業績評価指標)を持ち、住民を巻き込んだ計画がある町村に対して交付されます。
2014年以降はどこの町村でもこの計画を立てるようになりました。「地域資源を守る計画がある」という連合の指針に政府が追いついてきたなという印象を持っています」

━━━美しい村宣言はシビックプライド(都市に対する市民の誇り)にも通じているようですね。住民参加型で、景観だけでなく経済的にも存続可能な状態にもっていくための旗印のような。

二宮「そうですね。たとえば畑や棚田の景観も、そこを耕す人がいなければ森林の中に埋もれてしまうわけです。じゃあこの棚田を守るのか守らないのか。守るならどんな形でと考える。
山口県阿武町ではエリアの複数農家で有限会社を作っています。エリア全体で計画的に栽培、収穫を行うことで作業の負担を減らし、加工工場も作って豆腐製造をおこなっています。京都の伊根町では漁業者が株式会社を作り、給料制にしてちゃんと週2日の休みを守ったりしている。
皆さん生き残りをかけて必死に、どうやったら維持できるかと知恵を出し合ってやっていることが、日本においては先進的事例になっています。

こういった成功例は、町村がコンパクトであることが利点になっていると思います。だいたい2000~3000人の町村が多い。住民のグループも議会も限られた人数ですから、意見をまとめやすいです。

たとえば福島県の大玉村では、幼稚園、保育園、小学校、中学校が村営です。幼小中で一貫教育を行うことで子供たちの学びが充実したものになるといいます。一般的に、幼児教育は短大や専門学校を卒業したての、経験の浅い方が担当する場合が多いのですが、大玉村では大学から専門家を招いて幼小中一貫の教育に改革しました。しかも校庭は全部芝生。村営だからこそユニークな教育政策ができるのだと思います」

福島県大玉村の芝生校庭

━━━教育や景観、経済、あらゆる分野に美意識を浸透させていきながら、町や村で育ったことを誇りに思う。このシビックプライドと美意識が、ウェルビーイングに重なるように感じます。

二宮「地元への愛着は皆さんにあります。しかし多くの町村には高校がなく、進学時に町外、村外へ出ていく人たちもいます。
このことに対して島根県海士町では大胆な対策をしました。町内にある県立高校が人口減少で閉校になりかけたとき、町の費用で寮を建設しました。カリキュラムにも地域の利を見つめなおすユニークな教育を主導しました。そうしたら生徒数がV字回復して、今では他県からも進んでこの高校にくるようになったという事例があります。
なので、町営村営の中に高校教育をどう位置付けるのかということも、ひとつの大きなポイントですね。

島根県立隠岐島前高校

戦後、急激に都市中心の経済になり、多くの人が都市で生活していたのが今、見直されてきていますね。ちょうどこの2年のコロナ禍で、どこにいても仕事ができるようになってきて、じゃあ本当の幸せな毎日って何だろうとみんなが考えるようになったと思うんです。

昨日も同年代の女性と食事をしながら話していたんですよ。窓を開けて、そこに山や川が見えていたほうがやっぱりいいよねと。毎日どこに住んでいるか、どこで生活しているかというのは、すごく大事なことだと思います。

IT企業に勤める知人が最近、奥様の実家がある山形県の鶴岡市に移住しました。高度経済成長時代は便利な生活を求めていましたが、今はもう、それが満たされたんじゃないでしょうか。今は、子育てのしやすさ、生活の快適さが求められていると思います。町村では移住した人がそこで子供を産んで育てたり、新しくお店を始めて人気店になったり、という事例に事欠かきません。いろいろな変化が起きています。

こういった変化を起こすには、行政は働きやすい環境、子育てしやすい環境を整えることが必要です。子育て支援や就労支援、住宅の優遇、給食費無償や子どもの医療費無償など、いろいろな工夫をなさっているところが多いです。」

━━━ウェルビーイングの観点では、人と人とのつながりもとても大切です。美しい景観が見られるだけでなく、それを住民みんなが維持存続していこうとするつながりが、美しい村に住むことの幸福度につながっているように感じました。

二宮「確かにそうです。お祭りや伝統芸能が続いているところは多いです。人々の心の拠り所となるようなものがあるかどうかは、連合に加盟していただく際に必ずおききしています。桜や秋祭りなど、それを見るためだけに町外、村外から大勢の人が集まるような、独自のイベント、行事がある町村も多いです。

それは歴史ある建物の保存維持活動にもあてはまりますね。先ほどもお話しした京都府の伊根町は、海岸線に沿って伝統的な建築群が景観を作っています。建物の海側がそのまま船のガレージになっていましたが、今は従来の使い方をする人は減っています。ペンションやカフェ、一棟貸しの宿などの新しい取り組みをすることで景観を守っていこうと、地域住民が積極的に関わっています。

何が自分たちの町村の持っている美しさなのかを、加盟を機に住民自らが分析や検証をしたうえで、それをどう維持していくかを考える。事務局がどうこうしてくださいということではなくて、自分たちで考えて計画していくことが大事ですね」

━━━先祖代々が見てきた風景と、自分たちの時代に合わせた経済活動が両立できれば、若い人も都会へ出ることなくずっとその土地で幸せに生きていけますね。

二宮「そのために今、住んでいる若い世代の人たちが自ら考えるワークショップU35未来想像会議を始めたところです」

浅田さん(以下、浅田)「加盟町村地域を訪れると、若い方から自分の意見や思っていることを発言する場がなかなかないという声を聞くことがあります。連合の活動においても、若い方を含める機会があまりありませんでした。

そういった経緯がありまして、実際に未来をつくっていく村の若い皆さんに集まっていただき、10年後の村はどうあってほしいのかなどを話し合ってもらう機会を、昨年度から設けています。
ちょうど4回終わったところで、この10月に過去に参加した若者に全国から集まってもらう大きなイベントを予定しています。全国の若者がどう考えて、美しい村に住んでいる若者が今後どう考えていくかを共有していただこうと。若い世代への継承にもう少し力を入れていかなければという思いで、この活動をしています」

二宮「たとえば青森県の佐井村では、そのワークショップから出たアイデアを実現しているようです。佐井村で栽培したホップを使ったクラフトビールを作り、商品化されていますね」

浅田「『美しい村連合』に入ったことをきっかけにして、佐井村のように村としてのアクションプランを立てたところもありますし、ワークショップへの参加がきっかけで、高校生の男の子がうちの村には若い子たちの居場所がないんだ、じゃあ作ろうと動き始めたりしています。そういったきっかけ作りに、私たち事務局がやっている活動を生かしてもらえたらうれしいですね」

二宮「あとはやはり、女性の活躍ですね。加盟の審査の中にも、若者や女性の活躍の場に関する項目がありますが、成功事例を見ると、やはりどこの町村でも女性の活躍が大きい。名物女将がいたり、人気の食堂やパン屋を開いていたり。

女性の活躍なくして連合の活動もないとよく言うのですが、実は加盟町村の首長は全員男性で。先日も、総会で集合写真を撮ったら女性は私だけでした(笑)」

浅田「そうですよね。でも、先ほどお話しに出た佐井村では、2019年にはじめての女性サミットを開催しているんです。東北の美しい村連合に加盟している町村から女性の選抜メンバーが集められて。こういう村にしたい、じゃあ私たちは何ができるのかと、皆さん、ふだん発せられない思いが噴出して、すごく生産的な議論ができました。そういうのが少しずつ増えればいいなと思いますね」

━━━住民だけでなく、こういった活動に興味を持つ人はたくさんいそうですね。美しい村連合とのかかわり方には他にどういった方法がありますか?

二宮「事務局が今、SNSなどでさまざまな情報を発信しています。また、オンライン大学といって、ユニークな活動をされている町村の首長を中心に、今どんなことをやっているのか、地域通貨や公共交通はこうしている、といった事例を紹介してもらっています。

“行きつけの村を作ろう”という活動もしていて、ライブ配信なんですが、その土地のおいしいものやお酒などを紹介しながら、キーマンに語ってもらうイベントを開催していますね。

コロナ禍ということもありますが、その町村へわざわざ足を運ばなくても気軽に楽しめるような動画配信が増えてきました」

浅田「昨年から大学生に呼びかけて、美しい村を学生目線で発信してくれませんか、そのお手伝いをしてくれませんかと募集したところ、6名の学生が応募してくれました。今年も同じくらい集まったので、手ごたえを感じています。ほとんどが女性で、若い女性の関心層が増えた実感はありますね」

二宮「移住するにしても、奥様がうんと言わなければできませんからね(笑) 生活のことや子育てのことをちゃんと検証したうえで、じゃあ行きましょうとなると思うので。だから、女性が活躍すればこの連合も発展するのではないかと(笑)」

━━━すべての村に美しい村連合の考え方が根付くと、住みやすい日本になりそうです。

二宮「そうですね。まずは美しくないものを排除しましょうと。どこもやはり、廃屋の問題、耕作放棄地の問題がありますので、うちの村ではこうしているよと具体的な方策を学び合ったりはしています。

役場が住民に対してしっかり発信しているところであれば、定期的な草刈りや花植えを行ったり、新しく個人宅を建築する場合に屋根の色をそろえましょうと呼びかけたり。住民に協力してもらえるよう、ふだんからのコミュニケーションや関係づくりが大切ですね。

住民のほうも、ここは美しい村なんだからと街並みを整えることに協力しています。北海道の江差町では「いにしえ街道」という、江戸明治期の建物を活かしたストリートを整備しています。北海道の行政は150年ほどですが、松前藩の時代から続く江差町には370年の歴史があり、450年前から続く神社のお祭りが盛大に行われている土地です。日本の人口が増えて東北の樹木が採りつくされ、次は蝦夷の木だと江差の港からどんどん木材を運んで行ったのが近江商人です。
だから、「いにしえ街道」のストリートには大きな商家が多い。ストリート沿いにある玄関の反対側は、かつて海に面していたため船着き場や倉庫になっています。すごく独特な建物で、それが公開されて見学ができたり、店舗として使われていたりしているんですよ。

江差姥神大神渡御祭

連合の総会を開催した秋田県の小坂町にも驚かされました。小坂町は鉱山の経営で発展した町です。鉱山で働く人の娯楽のための芝居小屋や鉱山施設といった明治期の建物を今も残していらっしゃる。単に博物館的に保存しているのではなく、使いながら残しているところがすごい。その芝居小屋にプロの役者を呼んで演じてもらったりしているんです。

小坂村康楽館 芝居小屋としても現役の施設

今年6月に連合の総会をその芝居小屋で開いていただきました。会長挨拶では、花道のスッポンから会長がせり上がってきました(笑) 舞台の下の仕掛けをみんなで動かして廻り舞台を体験も体験しました。どれもこれも当時の木造の仕掛けですよ。私も模造刀を引き抜いてポーズを取らせていただきました(笑)

短い時間で芝居小屋を体験できるプログラムがちゃんと整えられていて、修学旅行生も多く訪れるそうです。

秋田にはプリミティブな日本が残っていると感じました。東北とひとくくりでは言えない。小坂町は青森県との県境にありますが、大和朝廷の力が及んでいない、中央を向いていない、そんな独自の生業を持ち続けてきた人たちの息吹を感じました。

自然環境が厳しくてもそこに住み続けてきたわけですから、大きな魅力がある。自然も深いですし、十和田湖も非常に幻想的。早くから国立公園に指定されておかげで、湖面から見えないように建築物を建てるルールがあるそうで、宿もちょっと森の中にあったりして。

かつては鉱山の成果物を運ぶために大舘まで線路が作られていたのですが、今はその廃線を利用した小坂鉄道レールパークという施設になっています。車両に宿泊できたりするユニークな観光施設ですね。それに、日本でのクリスマス発祥の地でもあるそうですよ。鉱山技術を指導したドイツ人が明治期にはじめて家族のクリスマスをなさったそうで、それに関連するイベントも盛んです。彼らが通っていた教会が残っていて、ライトアップもされるようですよ。

この国には、本当に美しい村がいっぱいあります。いつかぜひ訪れてほしいですね。とたえ加盟町村でなくても、ご自身の故郷であるとか、近隣の農村を見直していただく機会になるとうれしいです」

【インフォメーション】

「日本で最も美しい村」連合は日本全国から61の町村が加盟するNPO法人。2022年10月30日に東京で「日本で最も美しい村まつり」開催。フォトコンテスト、動画コンテストも募集中。2022年11月30日〆。詳しくは公式HPをご覧ください。
https://utsukushii-mura.jp/