足元から全身を調整!世界にひとつのインソール

ワタクシが毎日をご機嫌に過ごせている秘訣。
それは、日々の暮らしに
「好き」がいっぱいあることだと思うのです。

たまに落ち込んで涙したり、
イライラもしますが、
すぐに自分を笑顔にしてくれる
大小さまざまなお気に入りが
身の回りにたくさんあるので
ふと気づくと
楽しく嬉しい気持ちになっているのが常。

ワタクシが能天気で忘れっぽい性格なのでは?
そんなご指摘もツッコミも、ごもっとも。

でも、ワタクシは自分の「好き」を
発見することを
誇らしく日々楽しんでいます。
密かな愛用品、贔屓の店、アガる味。
旅、人、音楽、映画など。
特別なもの、些細なもの、
高価なもの、チープなもの、
もしかしたら、取るに足らないものも!?

そんなワタクシの大切な「偏愛」を
この連載ではご紹介させていただきます。
お付き合いいただけましたら、嬉しいです。

撮影・文/池水みと


画:池水みと

今回はワタクシが愛用している
インソールの話をしたいと思います。

まずその前に、
唐突ですが

人間の体はおよそ200個強の骨で
構成されていますが

足(くるぶしから先の足部)の骨は
片足で28個、
両足で56 個。

つまり全身の骨の約1/4が
足に集中していること、
知っていましたか?

力強く全体重を支える足は
たくさんの関節があるので
柔軟な動きや滑らかな二足歩行が
可能になっています。

そしてワタクシたちの
全身の関節、筋肉、腱などには
「位置覚」があるので
ねじれや曲がり具合などを
普段からあえて意識せずとも
自動的に知覚しながら
自由に動かすことができています。

しかも足の裏には
「メカノレセプター」と呼ばれる
センサーが豊富にあり
体の傾き、凹凸、滑りやすさなど
あらゆる情報を敏感に感知して
脳に伝達していますから

足と足裏からの感覚情報をもとに
脳は全身の筋肉に指令を出し、
バランスが保たれているのです。

まあ、人間の体は
なんと精巧にできているのでしょう!

ということは、逆に
足元の歪みや傾きなどの癖があれば
骨盤の傾きや動きまでアンバランスになり、
足底の感覚も鈍くなったりして、
体の不調も引き起こしかねない
ということでもあるのですね。

さて、こちらはワタクシの
普段履きのスニーカーです。

なかでもワタクシが
愛用しているのは
手前右の黒いシューズ。
よく履いているので
一番年季が入っています(笑)

実はスポーツ全般に
苦手意識があるワタクシですが、
長時間歩くことは苦になりません。

海外でも国内でも
街歩きは「大好物」。
旅をご一緒する人は
いつまでも歩ける健脚な方がいい!
なんて常日頃から思っているのですが

ここ数年、長時間歩いた後には
左足首に疲労が溜まるような
感覚があり、
中学時代スケートリンクで転んで
足首を捻挫した古傷が表出!?
今ごろになって…トホホ…
嫌だな…と困っていました。

ときには右の股関節にまで
違和感が出ることもあって、
しばらくいろんなケアをしながら
騙しだまし過ごしていましたが

そんなワタクシの
救世主となったのが
「入谷式足底板
(いりたにしき そくていばん)」
というインソールなのです。

世に言う「インソール」とは、
硬い靴の中底の上に導入される
靴の中敷のことですが、
スポーツシューズの場合は
路面からの衝撃吸収や
軽さを追求した既製のインソールが
購入時にすでに入っていることが
ほとんどなので

靴と足の馴染みをよりよくしたり
靴のサイズ調整目的以外では
インソールの追加や差し替えを
おすすめされることは
あまりないかもしれません。

ですが優れたインソールが
あるとないとでは大違い。

ワタクシはインソールを
「入谷式足底板」に差し替えてから
足の痛みがかなり軽減!
インソールの効果は侮れないと
実感しています。

聞けば、陸上選手に限らず
あらゆる種目のプロスポーツ選手が
パフォーマンスの向上や
弱点カバーなどさまざまな目的で
「入谷式足底板」のインソールを
作製されているのだとか!

ワタクシが現在愛用しているのは
デンマーク発ブランド「ecco」の
ウオーキングシューズに
写真左にある
ワタクシ専用の「入谷式足底板」を
挿入したもの。

この歩き心地を知ってしまうと
ヒールの高いサンダルや
サボなどの厚底で重い靴、
フラットソールの靴での
長時間歩行が
いかに足を疲れさせているかが
あまりに明らかなため(汗)

持っている全部の靴に
「入谷式足底板」が欲しくなります。

フィッターの方にオリジナルの
インソールを作っていただく場合、
足の甲の高さや土踏まずの形状など
あらゆる寸法を計測して
足底と靴底がフィットすれば
OKとしている
静的なチューニングが大半なのに対して

理学療法士の入谷誠先生が考案された
「入谷式足底板」は
運動学や解剖学をもとに
ひとりひとりの歩き方を観察しながら
細かくインソールを手で削って
何十回もチューニングする
動的な視点が強い作製方法をとります。

少し話がそれますが、
「足底板」は正式には
「足底挿板(そくていそうばん)」
と言われ、
成長障害や変形性の股関節症などで
脚長差がある方や
糖尿病で脚が欠損した方、
極端なX 脚やO脚の方などが
アラインメントを整えるために
義肢装具士が作る領域のものでした。

「入谷式足底板」は
理学療法士の領域に
「足底板」を持ち込み、
履くだけで足の裏から感覚を入れ、
足からの運動連鎖によって
体全体の骨構造やバランスを整え、
痛みを和らげたり
患者が自律的に機能を改善
できるよう進化させたものです。

インソールを挿入した靴で
歩き続けることで
骨構造や骨盤のバランスなど
体全体を整えていくことが狙いなので
ひとりひとりの先々の変化を見越して
調整していくところがユニーク!

ですから「入谷式足底板」を使うと
ただ痛みが消えたり
歩行が改善されるだけではなく
不思議と自然に体全体が
整っていくことに驚きます。

「入谷式足底板」は
ひとりひとり完全オーダーメイド。
そして基本的には靴ごとに
作るものですが、

製作プロセスは
おそろしいほどの超アナログで
職人仕事なのであります。

おほほ、見苦しくてすみません。
これはインソール作製のプロセスで
テーピングを施された
ワタクシの足です。

入谷誠先生に師事され、
約30年間で14000例もの
インソールを作製されてきた
藤井友之先生に
ワタクシはお世話になっていますが

達人の藤井先生であっても
新規のインソールを作るのに
1〜2時間を要します。
(通常2時間はかかるそう)

インソール作製は
患者本人が
インソールを入れたい靴を持ち込み、
体の痛みや違和感、
実現したい歩きについての
要望などを伝えてから
スタートします。

最初は、靴を履いた状態と
裸足の状態での動作チェック。

このとき、藤井先生は
患者の骨盤や背中を触り、
骨盤の傾きや位置を変えて
数パターンのバランスを試しながら
患者を歩かせ、足踏みさせて
股関節の動きや体の傾きなど
さまざまなポイントを
比較観察します。

(ササッと腰や背中を触るだけで
自分でも不思議なくらい
歩き方が変化してしまうので、
ワタクシはこの藤井先生の手技を
忍者の技のようだと
毎回勝手に感動しております。
この鮮やかな職人技が
文字では伝わらないのが残念です)

続いて、
裸足にテーピングを施し
大小さまざまなサイズのテープを
足したり引いたり
位置や数を変えながら
微調整していきます。

患者は藤井先生に言われるがまま
東大宮にある治療院内の
10m長の歩行路を行ったり来たり。

テープを貼って
歩行チェック。
テープの位置を変更して
歩行チェック。
さらにテープを足して
歩行チェック。
テープを取ってみて
歩行の比較チェック。
体の動き方が良い方を採用して…
何十回もの調整が淡々と続きます。

歩行観察と調整を繰り返し、
最終的に
姿勢、歩き方、重心の位置など
バランスが良くなったと
見定められた段階で
テープの位置がカルテ化されます。

テープをカルテに落とし込んでいる最中の藤井友之先生(2021年12月時)

いよいよカルテができると
「インソール」への落とし込みです。

持ち込んだ靴の
もともとの中敷の形状をもとに
ベースを作ったところへ
カルテに沿った処方の形や薄さに
ウレタンフォームを
グラインダーで削り込んだものを
貼り合わせ、インソールを成形。

そのインソールを実際に
靴に挿入させた状態で歩行チェックし、
最終に微調整をして
仕上げとなります!

こちらは使い始めてから
2年ほど経過したインソールですが
これまで2度チェックを
していただいています。
(チェックは30分ほどで完了します)

使い始めは足裏に刺激が多くて
違和感があったりもしましたが
いつの間にか慣れてしまい、
インソールをつけた靴で歩くのが
心地よくなっていきました。

裸足での歩行時のコンディションも
整っていくそうですが
人間の体の繊細さと変化は
驚異的ですよね。

そうはいっても「入谷式足底板」は
歩行の動作解析をしながら
微細なチューニングを繰り返す
プロセスで作られますし、

足の痛みや不具合の解決だけでなく、
ケガの予防、疲労の軽減、
パフォーマンスの向上など、
インソールを作る患者ひとりひとりの
異なる目的に合わせながら、
時間軸の視点を加味した
見立てが不可欠。

つまりは
どれくらいの数を作製してきたか、
作り手の経験値がものをいいます。

経験豊富な藤井先生は
後進教育にも取り組まれていますが
歩けば歩くほど体が整う
インソールを作るための
職人的な技術は
一朝一夕では伝えられないと
おっしゃいます。

ちなみにインソールと一緒に
藤井先生がおすすめする靴下は
五本指ソックスです。

こちらはしっかりした造りで
指ひとつひとつが動きやすいので
足底のグリップ感がよく
インソールとの相性も◎
たしかに快適!歩きやすいです。

ショート丈のソックスは
足裏のラバーで足が滑らないため
長時間歩くときにうってつけ!

五本指ソックスは足に汗をかきやすい
男性が履くものだと
勝手な偏見&抵抗がありましたが
ここまで歩きやすいとは!

インソールを複数持ちする人は
少なくないそうですが、

ワタクシは昨年末に
2つめのインソールを
登山靴用に作っていただきました。
登山が大好きな藤井先生にお願いして
靴も見立てていただきました。

まだこの靴で山登りに
あまり行くことができていないので
もっと靴を慣らす機会を増やして
来年こそ富士登山をしたいと
今から(今さら)
意気込んでおります!

インソールを使い始めた途端
治療院に杖を忘れて帰ってしまうほど
即座に体が劇的変化を遂げる人もいれば、
変化に時間がかかる人もいるそうですが

ゆっくり変化する人は
足への刺激が入る時間が長くなるので
室内履きにインソールを作るのも
おすすめとか。

ハンガリー製のルームシューズ
「HAFLINGER」は
足の甲を深くカバーする形状が
インソールを作るのに最適らしいので
ワタクシも興味津々!

もっと早くに「入谷式足底板」に
出会っていたらなあ!と
ワタクシは思いますが
ご興味のある方にはぜひとも
違いを体感していただきたいです。

ちなみに、
長時間の調整作業が難しいお子様にも
時短版インソールを作ることは可能。
オトナの骨に変わるのは
小学校3年生ごろですが
気になる方は一度診てもらうのも
ありかもしれません。

【インフォメーション】

藤井友之先生の治療院
「ウォーキング&コンディショニングあゆみ」

埼玉県さいたま市見沼区東大宮4丁目23−7

水曜・日曜定休
電話 048-767-5575

<参考>
藤井友之先生による「入谷式足底板」の制作プロセスを紹介している動画
https://www.youtube.com/watch?v=VgedibtZhXc

池水みと / MITO Ikemizu
鹿児島ルーツの東京育ち。プロデューサー・編集者・ライター。リクルート在職中にアロマセラピスト資格を取得。フリーランスになってから調理師免許を取得。築地・豊洲の目利きと一緒に日本の伝統的な魚食文化の魅力を紹介するワークショップ「おいしい塩干教室」を主宰。「東京すし和食調理専門学校」が欧州に和食文化を伝える研修活動など海外向けプログラムに企画・通訳で関わる。幼少期にフィリピン、高校時代にブラジルに暮らしていたことから、日本文化への興味が強く、趣味は三味線・茶道・和菓子作り。最近の関心事は健康と予防医学。夢は自作絵本の出版。