永く愛したいから。骨董と金継ぎ

ワタクシが毎日をご機嫌に過ごせている秘訣。
それは、日々の暮らしに
「好き」がいっぱいあることだと思うのです。

たまに落ち込んで涙したり、
イライラもしますが、
すぐに自分を笑顔にしてくれる
大小さまざまなお気に入りが
身の回りにたくさんあるので
ふと気づくと
楽しく嬉しい気持ちになっているのが常。

ワタクシが能天気で忘れっぽい性格なのでは?
そんなご指摘もツッコミも、ごもっとも。

でも、ワタクシは自分の「好き」を
発見することを
誇らしく日々楽しんでいます。
密かな愛用品、贔屓の店、アガる味。
旅、人、音楽、映画など。
特別なもの、些細なもの、
高価なもの、チープなもの、
もしかしたら、取るに足らないものも!?

そんなワタクシの大切な「偏愛」を
この連載ではご紹介させていただきます。
お付き合いいただけましたら、嬉しいです。

撮影・文/池水みと


あっ!!

シンクでうっかり手を滑らせて
大好きなお皿を割ってしまった。

うわっ!

何気なくカップを持ち上げたら
グラスにぶつけてしまって
縁が欠けてしまった。

お気に入りの器ほど、
割れたときのショックは…
大きいですよね。

皆さんは普段、器が割れたら
どうしていますか?

以前のワタクシは
ちょっとした欠けくらいであれば
そのまま自分用に使っていましたが

派手に割れてしまった器は
泣く泣くサヨナラしていました。

「金継ぎ」という手法で
割れや欠けを直すことができるとは
知っていましたが、

器を送って見積もりをとる手間や
それ相当の時間や
値段がかかることもあって、
躊躇してしまって。

ただ
大切な器だけは捨てきれず、
割れた破片をまとめて包んで
仕舞い込んではいました。

あるとき、友人が
「金継ぎを近所で習い始めたから
割れた器があれば教えて!
ど素人だけど
それでもよければ直すよ」
と声をかけてくれて。

それならば、と
長らく捨てることができなかった
曽祖母の皿をお願いしてみました。

それがこちらのお皿です。

いつの時代のどんなものかは
よくわからないのですが
絵柄も色も好みで、愛着があって。

しばらく時間はかかりましたが
金色の線で継がれて
こうした姿でお皿が
手元に戻ってきたときは

新しく命を吹き返したような
うれしさがあって。

より一層、愛おしくなりました。

このとき、金継ぎは
器に唯一無二の味わいを加えてくれて
とてもいいものだなあ
割れるのも悪くないな、なんて
思ったのでした。

そしてコロナ禍の数年間、
外出ができない日々が続いて
おうちごはんの機会が増え、

それをいいことに
器好きのワタクシは
オンライン通販で
器を物色する楽しみを加速させ、
器の数もみるみる増えました(苦笑)

お料理をする機会も増えたので
小さな欠けのある器も増えました(笑)

お椀やマグカップなどは
小さなかけがあるだけでも
すごく気になってしまうもの。

昨年夏には、
割れや欠けのある器の数が
だいぶ貯まったこともあって
一念発起!
自分でも金継ぎをしてみようと
思い立ったのです。

まずはオンライン通販で
金継ぎキットを購入。

友人のすすめで、
生漆や金粉、ヘラなど道具類が
一式すべて入ってコンパクトな
「つぐキット」を選びましたが、
付属の手順書を見ても
手順や用語がちんぷんかんぷん。

これは独学ではなく
ちゃんと金継ぎを習いたい!

こちらのキットを使った
お教室があるというので
さっそく通い始めました。

金継ぎ教室「つぐつぐ」は
1コマ90分単位で
オンライン予約ができる
便利さと
自分のペースで
好きな時に通える気軽さ、

各コマ定員6人に
先生がひとりついてくださって、
きめ細やかに
作業指導をしてくださるのが
気に入って
昨年から通い続けています。

いざ始めてみると、
金継ぎについて
知らなかったことがたくさん!

器の割れ目の断面には
小麦粉と生の漆を練り合わせた
「麦漆(むぎうるし)」を
薄く塗って接着させること。

(最初は、小麦を使うの?
腐らないの?!驚きました)

穴や段差など、器の欠けには
麦漆に木粉や砥粉などを
さらに混ぜ込んだ
「刻苧(こくそ)」を
ヘラで0.5mm〜1mm厚ずつ
埋めては乾かす作業を
繰り返すこと。

大きな穴は一気に埋められないので
少しずつ重ねて埋めていくのです。

(コツコツ根気のいる作業!)

錆漆(さびうるし)を塗って
細かい穴埋めを行い、
耐水ペーパーで
水研ぎして表面を整え、
さらに
黒色漆や弁柄漆を塗ってから…

最後の最後に
金粉や銀粉を蒔いて
仕上げとなります。

(金を蒔く作業自体は数分で
呆気なく終わってしまいます!)

そして忘れてはならないのが
漆を塗るたびに、
漆を乾かす工程が入ること。

1日のこともあれば
1週間のこともありますが、
漆塗りの工程を済ませるごとに
しばらく
時間をあけなければなりません。

漆が固まるのに最適なのは
・温度20-30度
・湿度約70-85%
という環境。

教室では大きな棚が丸ごと
「漆風呂」になっていて、
濡れ雑巾が入れてあるだけではなく
スタッフの方が1日に何回も
霧吹きをして管理がされています。

自宅でも
発泡スチロールや段ボールの箱を
密閉させて湿度と温度を保てば
問題ないようですが、

教室に器を預けっぱなしで
身ひとつで通えばいいので
とてもありがたい&便利です。

仕上がりの美しさと佇まいのよさを
魅力に感じて始めた
金継ぎですが

ひとつひとつの作業を
丁寧に仕上げなければ
仕上がりがガタガタになるため
そこそこの集中力と根気を
求められます。

パソコンやケータイばかりを
触る日々なので
極細の筆や竹のヘラなどを持ち、
手を使って細やかな作業をするのは
非日常感もあって楽しいのですが

日常生活で何かモノが壊れると
つい速乾ボンドで
なんとかならないかと思ってしまう
ワタクシにとっては、

ひとつの皿の金継ぎが終わるのに
ここまで時間がかかるのか!と
最初は思ったものです。

ですがなんといっても
金継ぎのいいところは
成果物が日常生活で大活躍すること。

菓子や料理を盛りたい
お茶を飲みたい
お気に入りの器ばかりなので
つい熱心に作業を進めたくなります。

金継ぎ、銀継ぎ、そして
黒漆や弁柄漆の仕上げも可能なので
器の色に合わせて
選ぶのも楽しいものです。

器の縁のほんの小さな欠けを
金継ぎしても
誰にも気づいてもらえないかも
しれないのですが
それもまた、愉快です。

時間や手間ヒマをかけた分
愛着がわくことを実感しながら
金継ぎを楽しんでいますが

この頃は、皿が割れた時に
あ!綺麗に真っ二つに割れた
おっ!金継ぎしたらおもしろそう!
なんて即座に考えてしまうことも(笑)

急須の持ち手など
致命的な損傷でない限り
金継ぎで修復ができるので、
困ったことに
器が割れても
まったく悲しくありません…

ワタクシは普段から
ギャラリーの器展や
アンティークショップを
巡るのが好きなのですが、

骨董店によっては
割れや欠けのある器を
値引きして売るコーナーがあるので
金継ぎを楽しみたい方には
ぜひおすすめしたいです。
百円単位の掘出し物があることも!

器は必ずしも揃いである必要はなく、
面白いかたちの豆皿などを集めて
取り合わせて遊ぶのもいいですよね。

2018年 弘法市(東寺縁日)

都内の骨董市で
行きやすいのは大江戸骨董市。
たまに世田谷ぼろ市などにも
出向きますが、
今度機会を作って
ぜひ行きたいと思っているのは
旧白洲邸の武相荘で行われる
骨董市です。

京都を訪れる時には
古美術店や古道具屋の
はしごはもちろん、
10日、21日、25日を
あえて選んで
平安神宮、東寺、北野天満宮など
早朝からの骨董探しが最高です!

2018年 弘法市(東寺縁日)

オリジナリティのある
現代作家の器も素敵ですが
骨董の楽しいところは、
同じ柄のお皿や湯呑みでも
1枚ずつ筆の運びや
絵の出来が異なること。

歪んでいたり、かすれていたり、
印判がずれていたり。
緻密で精巧な器も素敵ですが、
なんだかどうしても
目が離せない器もあるのです。

幕末の器です、
明治期の器です、
と言われても
実はよくわからないのですが、
自分が生まれる遥か前から
この世に存在していた器を
手に取っている不思議。

さまざまな作り手と
数々の使い手を経て
自分の目の前にある器には
どんな物語があるのか、
イマジネーションが膨らむのも
骨董の器の魅力でしょうか。

骨董と現代作家の器

ワタクシは骨董が好きですが
割れたとしても
金継ぎして使いたいくらいの
お気に入りの器を選びたいと
いつも思っています。

永く愛して使いたいから
器の吟味も、金継ぎも、
楽しみながら、真剣です。

(そしてワタクシは
たいそうな言い訳をしながら
我が家の器の数が増えていくのを
正当化しているのです)

【インフォメーション】

金継ぎ教室
https://kintsugi-girl.com/7027/

TSUGUKIT(金継ぎキット)
https://shop-kintsugi.com/

株式会社つぐつぐ
https://kintsugi-girl.com/

池水みと / MITO Ikemizu
鹿児島ルーツの東京育ち。プロデューサー・編集者・ライター。リクルート在職中にアロマセラピスト資格を取得。フリーランスになってから調理師免許を取得。築地・豊洲の目利きと一緒に日本の伝統的な魚食文化の魅力を紹介するワークショップ「おいしい塩干教室」を主宰。「東京すし和食調理専門学校」が欧州に和食文化を伝える研修活動など海外向けプログラムに企画・通訳で関わる。幼少期にフィリピン、高校時代にブラジルに暮らしていたことから、日本文化への興味が強く、趣味は三味線・茶道・和菓子作り。最近の関心事は健康と予防医学。夢は自作絵本の出版。

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