ほっこり懐かしい鹿児島の郷土菓子

ワタクシが毎日をご機嫌に過ごせている秘訣。
それは、日々の暮らしに
「好き」がいっぱいあることだと思うのです。

たまに落ち込んで涙したり、
イライラもしますが、
すぐに自分を笑顔にしてくれる
大小さまざまなお気に入りが
身の回りにたくさんあるので
ふと気づくと
楽しく嬉しい気持ちになっているのが常。

ワタクシが能天気で忘れっぽい性格なのでは?
そんなご指摘もツッコミも、ごもっとも。

でも、ワタクシは自分の「好き」を
発見することを
誇らしく日々楽しんでいます。
密かな愛用品、贔屓の店、アガる味。
旅、人、音楽、映画など。
特別なもの、些細なもの、
高価なもの、チープなもの、
もしかしたら、取るに足らないものも!?

そんなワタクシの大切な「偏愛」を
この連載ではご紹介させていただきます。
お付き合いいただけましたら、嬉しいです。

撮影・文/池水みと


食べるとえもいわれぬ
懐かしさが込み上げてくるような、
思い出スイッチが入るような、
あなたにとって、
かけがえのない食べもの、
ありますか?

ワタクシにとってそれは、
鹿児島の素朴なお菓子。

実はこれまで
鹿児島で暮らしたことはないのですが、
両親が鹿児島出身で
親戚の多くが鹿児島にいたこともあり
幼い頃から甘口醤油や方言など
鹿児島カルチャーが
身近にあるワタクシ。

鹿児島のお菓子を食べると
懐かしいやさしさに包まれて
ほっこりするのです。

今回は
数多くある鹿児島の郷土菓子から
大好きなものをご紹介します。

かるかん
春駒
かからん団子
けせん団子
ふくれ菓子
あくまき

…これでも数を絞ったつもりですが、
多いですね(笑)

こうして書き並べてみると、
名前だけではどんなお菓子なのか
見当がつかないでしょうか?!

さて、まずは
鹿児島の代表的なお菓子
「かるかん(軽羹)」。

鹿児島では冠婚葬祭などの
贈答菓子の定番です。

かるかんは、なんといっても
自然薯がたっぷり入った
白い米粉生地が特徴。

作り手によって
生地の甘さや
もっちり度、ふわふわ度が
かなり異なるのですが
ワタクシは
明石屋さんのかるかんを
贔屓にしています。

餡入りのかるかん饅頭も
おいしいのですが、
プレーンな長い棹状のかるかんを
好きな幅に切り分けながら
いただくのが一番好き。

写真に写っている四角いかるかんは、
ミニサイズの四角い型に流し込んで
作られた個別パッケージのもの。
真ん中が膨らんで
割れ目が入っています。

長い棹を切り分けると
断面はきりりと真っ直ぐで
生地は一層きめ細やか。
食べ心地もよりしっとり!

ワタクシ、かるかんが大好きで
今年の誕生日には
屋久杉で作られた特製箱入りの
大きな棹状のかるかんを
自分の誕生日ケーキとして
購入しましたから!

「春駒(はるこま)」は
小豆餡と春駒粉を練り合わせて
棒状に成形して蒸しあげたお菓子。

弾力のしっかりした噛みごたえと
もちもち食感が独特です。

幼い頃に春駒をにぎりしめて、
この形とこの食感のお菓子は
あまり他にないなと
独特さをおもしろく感じていました。

なんてことはない素朴さ。
でも東京ではなかなかお目にかかれない
ユニークなお菓子です。

「かからん団子」と「けせん団子」は
どちらも植物の葉っぱを用いた
大衆的な餅菓子。
お茶うけ菓子、といったイメージです。

鹿児島では、地元の和菓子店や
スーパーで買い求めることができますが
東京でも「かごしま遊楽館」や
鹿児島の物産フェアなどで
見つけることができるはず。

「かからん団子」は
蓬もしくは小豆餡を
練り込んだ餅を
かからん葉(サンキライ)で
はさんだもの。

かからん葉には抗菌作用があり
餅が痛みにくいそうですが、
「病気にかからん(かからない)」
という言葉にかけて
縁起物とされているそう。

かからん葉の香りが
餅に移ってとても爽やかです。
もちが硬くなっても、
葉っぱごとちょっと温め直せば
お餅はふんわり復活!
香りも倍増!
また楽しめます。

「けせん団子」は
小豆餡を練り込んだ餅を
けせんの葉で挟んであります。

「けせん」はニッキのこと。
ニッキ=桂皮・シナモンです。

けせんの葉の抗菌効果が
暑さで餅が痛みやすい鹿児島では
重宝されたのだと思いますが、
葉っぱをむきながら
食べるという行為そのものが
楽しくて。

あんことけせんの香りは
えもいわれぬ組み合わせで
後味が良いのです。

「ふくれ菓子」は
小麦粉、砂糖、重曹を混ぜて
蒸して作る、
ごくシンプルな蒸しパン。

膨張剤に
重曹(重炭酸ソーダ)を使うので
「ソーダ菓子」という呼び名の地域も
あるのだとか。

黒砂糖で味付けするのが定番ですが
ワタクシのお気に入りは
味のバリエーションが多彩な
まるはちふくれ菓子店のもの。

プレーンのふくれ以外に、
ココア、抹茶、黒糖や
落花生、けせん(シナモン)
などがあります。

ココアと落花生が
ワタクシはお気に入りで
朝ごはんがわりにいただくことも。

むっちりふわふわ食感のお菓子ですが
蒸し直しても、
焼き目がつくくらい
トースターで焼いても◎

こちらのふくれ菓子の魅力は
乳、卵、酢なども入って
重曹くささがほぼないこと。
そして、甘すぎない!

鹿児島空港にも置いてあるので
毎回必ず買って帰ります。

そして最後にご紹介するのは
古くから伝わる伝統菓子
「あくまき」です。

鹿児島の人は「ちまき」と呼び、
5月の端午の節句では
必ず食べるものですが
今では年中お店に並びます。

各家庭がかつては自家製のちまきを
作って振る舞っていたそうですが
今では買い求めることの方が多いそう。

あくまきは作り方が独特です。

一晩ほど灰汁(あく)*に
漬けておいた餅米を
灰汁に漬けておいた竹の皮に包み、
糸や竹の皮から作った細い紐で縛り
灰汁で3-4時間ほど炊くのです。

*灰汁=木灰を水につけた上澄み液のこと。

つまり、
あくまきは蒸し上がった餅米。
竹の皮の中には
もっちもちプルプルの
餅米が詰まっているのです。

食べる時は、
糸で好みのサイズに切り分けて。
(包丁で切り分けると、
刃がべたべたになるので注意!)

独特の竹皮の香りと
えぐみのような風味が少し。
味自体はあまりないのですが
餅とわらびもちの
いいとこどりだと
ワタクシは思っています。

黄粉と砂糖、黒蜜などをかけて
朝ごはんやおやつに
いただくことが多いのですが

保存性も高く、
冷めてもカチカチにならないので
かつて薩摩の兵は戦の際には
兵糧食として
あくまき を携帯したそう!

こうして改めて見直してみると、
南国鹿児島ではなぜこうも
むっちりモチモチ食感な
多いのでしょうか!

ワタクシの場合は、
ほんのり甘くてなんとも素朴な
鹿児島のお菓子を頬張ると
郷愁を帯びた優しい気持ちに。

つい色々と思い出すことも。

台風の多い年にだけ必ず豊作になる
祖父の庭の柿の木。
夏に飾られる綺麗な盆提灯。
廊下を歩くとミシミシ音がして
怖かった夜中のトイレ。

…懐かしいなぁ。

晩年は認知症になったけれど
いつも優しかった
薩摩おごじょ*の亡き祖母は、
とても筆まめでした。

*「薩摩おごじょ」とは 鹿児島の方言で「鹿児島の女性」のこと。

麦味噌や庭の果樹と一緒に
手作りのお菓子を詰めた小包を
よく送ってくれて。

祖母の長文の手紙と
真っ白で丸い形をした
祖母手製のかるかん饅頭が
一等好きでした。

おぼろげな昔のことにも
目の前のことにも
一瞬一瞬に
じんわりと
ありがたい気持ちがわいてきて

鹿児島の素朴な味わいには
人のあったかさを感じられるから
好きなんだなぁ
と、思い至るのです。

【インフォメーション】

鹿児島の郷土菓子は、
鹿児島県の物産展や物産館
もしくはオンラインショップで購入可能です。

鹿児島県のアンテナショップ
「かごしま遊楽館」
https://www.instagram.com/kagoshima_yurakukan/
https://www.pref.kagoshima.jp/yurakukan/

かるかん、春駒
「明石屋」
https://www.akashiya.co.jp

ふくれがし
「まるはちふくれ菓子店」
https://maruhachi-kagoshima.com

けせん団子、かからん団子
「園田食品」
http://www.omega.ne.jp/koyou/sonoda_syokuhin/
https://kanoyashi-kankokyokai.jp/publics/index/322

あく巻き
「寿屋」
http://www.antennashop.jp/soroibumi/201105/46.html

池水みと / MITO Ikemizu
鹿児島ルーツの東京育ち。プロデューサー・編集者・ライター。リクルート在職中にアロマセラピスト資格を取得。フリーランスになってから調理師免許を取得。築地・豊洲の目利きと一緒に日本の伝統的な魚食文化の魅力を紹介するワークショップ「おいしい塩干教室」を主宰。「東京すし和食調理専門学校」が欧州に和食文化を伝える研修活動など海外向けプログラムに企画・通訳で関わる。幼少期にフィリピン、高校時代にブラジルに暮らしていたことから、日本文化への興味が強く、趣味は三味線・茶道・和菓子作り。最近の関心事は健康と予防医学。夢は自作絵本の出版。

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