ウェルビーイングの鍵は自由な働き方にあった

ひとつの会社に人生を捧げるような働き方は、すでに過去のものとなりつつある。
Z世代は新卒で入社した1年目から転職を視野に入れているというし、
育児や介護、定年後などライフステージに応じて働き方を柔軟に変える人もいる。
そんな今の時代に注目されているのが、フリーランスという選択肢。
縛られるものが少ない自由な働き方は、長い人生をより楽しく有意義にしてくれそう。
しかし、その一方で、責任やお金の不安がつきまとうのも事実。
フリーランスに寄り添うサービス『フリーナンス』の存在が、
自由な働き方への一歩を踏み出せずにいたあなたに、勇気を与えてくれるかもしれない。

お話しをうかがった人/GMOクリエイターズネットワーク(株):FREENANCE(フリーナンス)事業責任者 次松武大(つぎまつたけひろ)さん
聞き手/ウェルビーイング勉強家:酒井博基、ウェルビーイング100 byオレンジページ編集長:前田洋子
撮影/原 幹和
文/小林みどり


━━━『フリーナンス』が立ち上がったとき、フリーランスで働く人々にとって待望のサービスが登場したと感じました。まずはサービスのコンセプトや商品の特徴を聞かせてください。

次松さん(以下、次松)「ありがとうございます。『フリーナンス』は2018年10月、今から3年と少し前に立ち上がりました。簡単に言うと、フリーランス向けのお金と保険のサービスです。

ひとつは、フリーランスが事業者として活動していくうえで問題になりそうな、お金についてフォーカスを当てています。
フリーランスという働き方に何か不安を感じますか? というアンケートをとると、必ずどのアンケートでも第一に収入が不安定なことと書かれます。なので、まずはそこに対する課題解決ができないと、フリーランス向けのサービスとしてはよくないだろうという思いがあります。
具体的に言うと、請求書の買い取りという、資金繰りを改善するための『即日払い』という有料サービスを行っています。
現時点で、我々のビジネスとしての収入のほぼ9割がこれによるもの。『フリーナンス』を支えている柱ですね。

もうひとつが、保険です。
フリーランスの方は企業に勤める方とは違い、すべて自分の責任でお仕事をされています。何かミスがあったときもご自分の責任というのが原則。フリーランスは自由な働き方ではありますが、自由には責任がセットで伴ってきますので、そのハンデを背負っている部分を少し軽くしてあげたいなと。そうすることで、いろいろな人がフリーランスとしての活動に踏み出せるような、背中をそっと押してあげるようなものとして、保険のサービスを位置づけています」

━━━22世紀は“個の時代”になると言われています。御社がフリーランスという働き方に着目したのはどんな理由からでしょう。

次松「個のエンパワーメントみたいなものは、社会的なテーマとしてずっとあると思っています。
一方で、国や自治体がフリーランスという働き方に着目し、それを勧めるという方針は出していますが、それに対する社会制度みたいなものは伴っていない印象です。

我々はもともと2002年の創業から、ウェブを中心に編集プロダクション事業をやっていたんですけれども、ライターさん、カメラマンさん、デザイナーさん、いろんなフリーランスの方と接する中で、必要とされる社会制度が全然整っていないと如実に感じていました。

特にクリエイティブ畑、たとえば出版社とライターさんの関係は、我々から見るとけっこう厳しい契約をさせられているなと思うことが多くて(笑)。

我々は従来の出版社ではなくインターネット企業ですし、親会社がしっかりあったので契約面や著作権の扱い、下請法などは当初からかなり厳しく遵守していました。
すると、クリエイターさんたちから“こんなにしっかりしている会社は初めてです”とか、“感動しました”なんて言われて、逆にこれって普通じゃないのか、と気づいたわけです。

それで詳しく話を聞いてみると、さまざまなペイン(痛み)があるんだなと。
能力的に素晴らしいフリーランス、クリエイターの方々が会社を一歩飛び出して活躍するには、まだまだやりづらい風土があると思うし、社会の機運の高まりもあって、我々が何かサービスとして提供することでその背中を押せるんじゃないかと感じ、『フリーナンス』の立ち上げにつながったのです。

もともと創業当時から、定款にクリエイター支援事業と書かれていまして、それは我々が営業して仕事を取ってきて、フリーランスのクリエイターの皆さんに仕事をお渡しするという位置づけでした。『フリーナンス』を始めて、保険であったり金融面であったり、もう一歩進んだ支援ができるようになったかなと思っています。
制作事業からサービス内容を180度転換させたというよりは、クリエイター支援の文脈の中でさらに進化させたという気持ちでいます」

━━━自由な働き方の障壁となるものは、やはりお金のことが一番大きいのでしょうか。

次松「そうですね。やはりお金の悩みは大きいと思っています。
ただ、人生100年の時代でキャリアチェンジやライフステージの変化などの問題は、まさに『フリーナンス』が解決したい問題です。

今、社会的には必ずしも企業に属する必要がなくなってきて、企業に属することが逆に足枷となる場合が増えてきたと思うんですね。通勤の時間帯が自分の生活と合わないこともあるでしょうし、早い会社だと60歳で定年を迎え、まだまだ働きたくてもその会社では働けないとか。

つい最近、当社のオウンドメディアで取材した方が言っていたのですが、60歳で定年になり90歳まで生きるとしたら残りが30年もあり、その30年は会社に入社してからのキャリアとそれほど変わらないと。そこから働くとすると、もちろん新しい企業を探して働くのもひとつの解であるとは思いますが、それまで培った経験や能力を、ひょっとするとひとりで活かすことができるかもしれない。そのとき、我々のサービスを使ってもらえれば、ちょっと背中を押せるのではないかと、よく考えます。

また、副業という文脈でも、会社に所属しつつ個人としてお仕事をされるときも、『フリーナンス』がお役に立てるかなと思いますね」

━━━フリーランスになってから、いかに会社に守られていたかを実感する人が多そうですね。入金はいつかとか、請求書はどうすればいいのかとか。

次松「そうですね。『フリーナンス』のサービスのひとつに『即日払い』というのがあって、分かりやすく言うと請求書を買い取るというサービスなんですが、請求書の入金日はいつですかと聞くと“入金日は書いてないです”と(笑)。今まで書いたこともないし、まあクライアントが支払うときが入金日ですなんて。これでは我々は請求書を買い取れないんですよね。

制作事業でずっとフリーランスの方々と接してきましたが、いざ『フリーナンス』を展開してみると、あれ、そういうものなの? と思うことが多々ありますね。書いちゃいけないものだと思っていたり。

でも、入金日が書かれていない請求書を買い取ってほしいと言われても、そこは譲れません。入金日はちゃんと書かなくちゃダメですよと。買い取る買い取らない以前の問題で、企業間であればありえないので、ちゃんと書いてくださいねと。

我々もフリーランスのお金の問題などの情報発信はメディアとしてずっと続けていて、それがある意味、啓蒙になっているかなと思っています」

━━━ユーザーからの反響はいかがでしょう。

次松「感謝いただけることはけっこう多くて、『即日払い』もそうですし、保険の部分についても同じようにたくさんのお声をいただいています。

また、フリーランスを昔からやっている方には、“こんないいサービスが出てきたなんて、世の中が変わったんだな”というようなことは、けっこう言われますね。

ただ、資金繰りに困って痛みの部分が顕在化した状態で『即日払い』などのサービスにお申込みいただくケースが多く、審査をしてお断りせざるを得ないときには、ちょっと温度高めなお叱りを頂戴することもあります」

━━━インターネットサービスは便利か不便かという尺度でとらえられがちですが、感謝されるという言葉は印象的ですね。最近、バーチャルオフィスのサービスも展開されたと伺いました。

次松「はい。ありがたいことに、想像以上に反応がよくて。

『フリーナンス口座』というサービスがありまして、本名ではなくペンネームやアーティスト名で口座が発行できます。それと同様に、『バーチャルオフィス』は自宅の住所ではない住所を有料で使え、郵便物の転送も請け負うサービスです。

個人で事業をするとなると、本名や住所などの個人情報をクライアントに提出しなければいけないことが増えますよね。そこの部分が、『フリーナンス口座』や『バーチャルオフィス』を利用することで匿名化していくわけです。
匿名化することがいいのか悪いのかは議論があると思いますが、個人情報を守ったうえで、クリエイターとして、フリーランサーとして活躍できるようにしていくというのも、サービスのひとつの方向性としてはやったほうがいいのではないかと。

たとえば、どんな企業でも会社の登記簿謄本に代表の自宅の住所が書かれるんですよ。どんな優良企業でも不当な恨みをかうことはあり得ることで、プライベートの住所を明かさないといけないのはけっこうなリスクだと思うんです。
それが個人となると、もっと身近な問題になるかもしれない。クライアントとフリーランスは力関係がいびつなケースがどうしても多いので、フリーランスとして働きやすくするという意味で、『バーチャルオフィス』や『フリーナンス口座』を安心して使ってほしいという思いでいます。

これは『フリーナンス』が与信の役割も担っているからできることです。
『フリーナンス』は登録時に本人確認などをしっかり審査しているので、個人の認証基盤として成り立っています。企業の側がフリーランスの方を使いたいというときに、『フリーナンス』に登録しているユーザーは安心して使えますよという、企業に対して保証をしているサービスという側面もあるんですね」

━━━なるほど。企業とフリーランス、双方にメリットがあるサービスなんですね。御社に登録するフリーランスは、どんな業種の方が多いのでしょうか。

次松「やはりウェブ系のクリエイターさん、デザイナーさんが多いですね。もともとの制作事業の関係でライターさんやカメラマンさんも多くいらっしゃいます。

また、一人親方をされている土木関係の方や、最近では軽貨物の運送の方も増えていますね。総合ECサイトの荷物を軽自動車で配送しているドライバーさんを見かけると思いますが、皆さん個人事業主なんですよ。契約している会社から軽自動車を安くリースして、フリーランスの個人事業主として配達していらっしゃいます」

━━━幅広い業種の方に利用されているんですね。最後に、今後の展望をお願いします。

次松「単にお金に困っているフリーランスのためのサービスになってしまうのは避けたいと思っています。
まずは安心してフリーランスとしての活動ができるサービス設計をしたうえで、いざ資金繰りの必要が生じたときに利用してもらえたらうれしいです。

そのためにも、フリーランスの方々の暮らし、保険、仕事、与信、この4つの分野で総合的に応えていけるサービス展開をしていきたいですね。
それによって、会社員と遜色ないくらいにフリーランスという生き方を選択しやすくなる世の中に、『フリーナンス』のサービスを通じてなっていくといいなと思っています」

【インフォメーション】

『Freenance(フリーナンス)』は、フリーランスや個人事業主の仕事や暮らしを支えるお金と保険のサービス。仕事中の事故や著作権侵害などのトラブルを補償する『あんしん補償』、請求書を買い取り資金繰りをサポートするファクタリングサービス『即日払い』、ケガや病気で働けなくなった場合の所得補償『あんしん補償プラス』など、フリーランスの不安を解消するためのきめ細かなサービスを展開。登録や会費は無料。