今どきの家族づくり

感染拡大と収束を繰り返すコロナの脅威、日常の問題となった気候変動に伴い、企業と個人の行動の変容を余儀なくされる環境問題、デジタル化が進む中で拡大する経済格差、非接触が求められる中、変化する人間関係……。今、なぜ「ウェルビーイング」なのか。
コロナ以前から四半世紀以上にわたり大規模な生活者定点調査を実施してきた第一生命経済研究所の膨大なデータと分析は、私たちの「越し方、今、行く末」のとらえ方のヒントになり、行動の指針となるはずです。

文/的場康子(まとばやすこ)
第一生命経済研究所ライフデザイン研究部 主席研究員
専門分野は、労働政策、子育て支援など
イラスト/ながおひろすけ


今どきの出会い方

コロナ禍で出会いの機会が少なくなり、婚姻数が大幅に減少し、少子化も加速しています。しかし、このような先の見通しの持ちにくい時代だからこそ、共に人生を歩むパートナーを探し求める人も多いようです。多くの人が感染対策のために長期にわたりステイホームを余儀なくされました。人と思うように会えなくなり孤独を感じるようになって、「安心できる人と一緒にいたい」「ともに寄り添える家族が欲しい」と思い、結婚願望が高まっているとも言われています。
 
かつて、結婚相手との出会いには、親族などによって紹介される「お見合い」という方法が多くとられた時代がありました。しかし、それも時代の変化に伴い、自分で結婚相手を見つけ、選ぶ「恋愛結婚」が多くなりました。そして今では、「婚活サービス」が注目されています。これは、かつての「お見合い」と「恋愛結婚」のそれぞれの良さを合わせもったものといえるかもしれません。

婚活サービスの一つに、アドバイザーがふさわしい相手を紹介し、結婚のサポートをしてくれる「結婚相談所」があります。かつての「お見合い」の場合の「親族」に代わって、結婚相手を有料で紹介してくれるサービスです。最近では、コロナ禍で需要が落ち込んだホテル業界などが結婚相談所事業に新規参入するなど、多方面から婚活サービスが注目されています。

また、結婚につながる出会いを目的とした「婚活パーティ・イベント」も婚活サービスの一つです。結婚相談所が実施することが多いですが、多くの自治体でも、婚活パーティーをはじめとして、日帰り旅行、体験活動などのアクティビティを盛り込んだイベントなどの婚活事業を行っています。自治体にとっての婚活事業は、若いカップルの家族形成を支援し、定住を図ることで、人口減少と少子化の解決につなげたいという狙いもあるようです。コロナ禍で収入が減少した女性など、生活の安定を求めて真剣に結婚を望むようになった人も多いようです。婚活イベントは「不要不急ではない」ことが改めて浮き彫りになりました。

そして、コロナ禍で最も広がっている婚活サービスは「インターネットの婚活サービス」です。インターネット上の婚活アプリ(マッチングアプリ)によって、多様性に富んだ多数の人の中から、職業などのプロフィールや価値観、趣味など「相性がよさそうな人」を効率的に選んで出会うことができることが最大のメリットです。いわば、インターネットのアプリが「お見合い」の相手を探してくれるサービスです。コロナ禍でリアルに会うことが難しい中で、オンラインを活用して効率的に交際を維持することができるということで利用が一気に広がりました。オンラインでは、リアルで会うよりも時間や場所の制約が低く、費用も抑えられるという特徴があります。
ただ、気軽に利用できる利便性の良さがある一方で、本当に信用できる人かどうかを判断することの難しさもあります。また、多くの人と会ってもなかなか理想の相手に出会えなかったり、実際に交際するようになっても、うまく進展せずに「お断り」が続いたりすると、気分が落ち込んで心身に不調をきたす人も少なくありません。いわゆる「婚活疲れ」です。
そのような「婚活疲れ」を解消するには、自分の好きな趣味などに取り組む時間を増やしたりして、婚活から少しだけ距離をおいてみることが必要といわれています。自分の人生を長期的に考えて、自分はどのように生きたいのか、あらためて自分を見つめ直してみることも大切です。

下のグラフは、若い未婚者が考える結婚相手との理想的な出会い方を示したものです(図1)。理想的な出会い方として、最も多くの人が挙げているのは「共通の趣味」です。自分が好きなことを一緒に楽しみながら生きたいと思っている人が多いようです。婚活によってすぐに結果が出なかったとしても、自分らしさを失わないために、自分が好きなことを何か見つけて打ち込んでみることによって幸せへの道が広がるかもしれません。

次に理想的な出会い方として多いのは、「会社・仕事を通じて」です。コロナの感染拡大により在宅勤務が広がったことで、社内外で多くの人と交流することが少なくなり、出会いの機会が失われてしまいました。
しかし、コロナ禍の働き方に慣れてくるにつれて、「新しい日常」が社内恋愛の新たなメリットとして見直されるようにもなりました。例えば、「外出制限により、出会いの場として、社内に目を向けるようになった」、「感染リスクを考えると日常的に接している社内の人の方が安心」、「リモート勤務であれば気兼ねなくつきあえる」ということも言われています。また、社内結婚を推奨している企業もあります。「恋愛・結婚で社員同士が仲良くなれば、企業の団結力が高まり、生産性の向上につながる」「女性の定着につながる」ということで、社内の恋愛や結婚を支援し、社内結婚をした社員を対象に祝い金や自社製品の祝い品を支給しているのです。

コロナによって、出会いの機会が失われてしまいましたが、「新しい日常」の中で新たな出会い方により、新しい家族も生まれています。今後さらにテクノロジーが進化し、リアルでの出会いと同じようにオンラインでも安心して相互理解を築くことができれば、さらに出会いの機会が広がることも期待できるでしょう。

今どきの夫婦の信頼構築

「新しい日常」の中で、「出会い」方も多様になりましたが、「結婚」のスタイルも様々に広がっています。共働きが増え、男女ともに自分の生き方や価値観、キャリアを大切にしながら結婚をする人が増えています。最近では、一方がいずれかの戸籍に入籍する法律婚による「夫婦同姓」のみでなく、姓を変えずに「夫婦別姓」を望む人や、平等な夫婦関係を維持したいということで同居しても入籍しない「事実婚」を選ぶ人も増えているようです。さらに、入籍しても同居しない別居婚や、共働きで子どものいないDINKS(Double Income No Kids)、熟年結婚、国際結婚、LGBT婚など、結婚やパートナーシップのあり方も多様になっています。

このような中、「結婚契約書(あるいは婚前契約書)」が、特に若い人の間で注目されています。「結婚契約書」とは、結婚前に、家事や育児、介護、生活費の分担方法、財産管理、子どもの教育方針、離婚時の取り決めなど、夫婦の合意事項を定めておくものです。結婚するにあたって、あらかじめ取り決めをしておくことで、お互いの価値観を尊重し、対等な夫婦関係を維持しようとするものです。
実際、日本ではまだ「結婚契約書」の浸透度は欧米に比べて低いですが、これから結婚する若い人から利用が進んでいけば、「結婚契約書」を締結した上での結婚というスタイルも広がっていくことが予想されます。

また、夫婦の信頼関係の維持ということでは、アプリなどのコミュニケーションツールの活用も主に若い夫婦の間で広がっています。例えば、「家事分担アプリ」や「価値観をすり合わせるアプリ」、「夫婦の対話・理解促進のための交換ノート」などが開発されています。内閣府男女共同参画局のホームページでも「夫婦が本音で話せる魔法のシート『○○家作戦会議』」が紹介されています。共働きのために忙しくて夫婦がお互いに向き合う時間が取れなくなってしまうと、気持ちも離れてしまいます。そのような状況を避けるために、日常的にお互いの気持ちを「見える化」することで、幸せな夫婦関係を維持しようとするツールです。

実際、夫婦関係に関する意識をみると、このようなツールや結婚契約書を活用している人は「特に利用していない」人に比べて、「夫婦関係に満足している」人が多いことがわかります(図2)。「自分たち夫婦は、お互いに信頼し、理解し合っている」、「夫婦で家事を分担している」、「結婚しても、自分の望むキャリア形成をしたい」人も多いです。

今後、共働きが増え、夫婦のあり方が多様化する中で、お互いに自分らしく生き、自立した夫婦関係を維持するために、こうしたサービスを利用することも一つの方法ではないでしょうか。ともに生活をしていれば、予期せぬ軋轢が生じることもあります。そのようなときには、お互いの価値観を尊重し合い、寛容な心をもって、相手を思いやる気持ちを忘れないことも幸せな夫婦関係の構築のために重要です。

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